日本企業でDXをうまく進められない本当の理由 デジタル組織には「GAFAな働き方」が必要不可欠

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このような行動規範やビジネスやサービスのつくり方が相まって、意思決定も実行のスピードも早い。社内向け、社外向けの仕組みをすべて合理的に考え、デジタル技術で効率化しているため、それらに何か差別化要因ができるところを見つけたら「すぐに」打ち手を実行する。社外で見つけた知見があれば社内に適用するのはもちろん、社内で見つけた知見があれば社外で売れるかどうかすぐに試す。うまくいけば、どんどんビジネスにしていく。

社内、社外の双方でデジタル技術を利用した価値の創出を徹底的に行った結果、アマゾンの仕事のやり方はますます強化され、それによりサービスの価値やスピードがさらに向上するというシナジー効果が生じている。

ここまでに述べたのはアマゾンの仕事のやり方であるが、GAFAや急成長を遂げたデジタルネイティブ企業(多くはIT企業と呼ばれている)に共通するものである。アマゾンのほかにも、コンパック、EMC、VMware、楽天、マイクロソフトに在籍した筆者の経験と考察から「GAFAな働き方」の特徴は次の5点になる。

・ 企業文化や行動規範が明文化されている
・ 仕事の役割が明確に設計されている
・ コミュニケーションが最適化さている
・ 実力主義(成果主義ではない)で多様性がある
・ KPIやOKRがクリアになっている

日本企業の中で、DXに成功したといえる企業がほとんどない。その理由は非常にシンプルだ。デジタル技術の導入に気をとられ、それを利用した新しいビジネスモデルを考えることも不十分であるし、何より「GAFAな働き方」の仕組みをつくれていないからだ。「GAFAな働き方」をそのまま、日本企業に導入することは難しい。自社の強み・資産を最大限に活かしながら、「GAFAな働き方」を取り入れていくほかない。

DXが不要なデジタルネイティブ企業も…

ただし、DXが不要な会社もある。日本でいえば、デジタル技術をビジネスの根幹としている、LINEやメルカリのようなデジタルネイティブ企業だ。そもそもが、デジタル技術をテコに、既存のビジネスのやり方を変え、伝統的な日本企業とは違った新しいビジネスモデル・働き方をつくってきたのだ。こうした企業には、そもそもDXは不要である。

しかしながら、デジタルネイティブ企業でも、時が経つうちに、解消することが面倒で放置されている組織や技術の「負の遺産」が積もってくる。そうなると、改革が必要になってくる。つまり、デジタルネイティブ企業には「デジタルトランスフォーメーション」の「デジタル」が不要だが、「トランスフォーメーション」が必要であるということである。

ちょうど、ニコニコ動画・生放送を運営していたドワンゴは4年前までは、そうした状況に陥っていた。そして、筆者はその改革に取り組んだ。その改革の経験はDXを進めている方々に非常に役立つと考えている。

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