菅首相、防戦一方で「年明け解散論」が急浮上 新大統領誕生後の訪米など実現に高いハードル
加えて、立憲民主との合流を拒否した新国民民主党との選挙区調整も難航必至だ。野党でありながら与党寄りの路線をとる日本維新の会や、「消費税5%」を共闘の条件とするれいわ新選組との競合も、全国的な野党統一候補を擁立したい立憲民主のハードルとなっている。
こうした状況から、菅首相も「野党の態勢が整わないうちに解散すれば、負けるはずがない」と判断してもおかしくない。もちろん、学術会議問題などで露呈した菅首相の強権的政治手法への国民的反発もあり、「就任時の高支持率下での解散で見込まれた自民300議席はもはや幻想」(自民選対)とされる。有力な選挙アナリストの分析では、「自民党は20議席程度減らしても絶対安定多数(261議席)は確保し、政権も揺るがない」との予測が多い。
目指すは総裁選再選で本格政権
菅首相が目指すのは、2021年9月の自民党総裁選での再選による4年間の本格政権とみられている。もし、年明け解散で一定以上の勝利となれば、学術会議問題だけでなく安倍前政権から引き継ぐ形となったさまざまな負の遺産も「選挙勝利で清算される」(自民長老)ことになる。その上で経済再生と携帯電話料金値下げなどの実利的な政策を実現すれば、再選を阻む要因はなくなる。
しかも、総裁選で惨敗した岸田文雄前政調会長と石破茂元幹事長は、「無役になったことで戦闘力を失った」(細田派幹部)とみられている。とくに石破氏が派閥会長辞任を表明したことは、「総裁選からの撤退宣言」とみられている。
党内基盤拡大のため「大宏池会構想」を打ち出した岸田氏も、その対象となる麻生派や谷垣グループの反応は鈍い。このため「衆院選で負けなければ、菅首相の総裁選での無投票再選が既定路線化する」(自民長老)と確実視されている。
そうした中、10日の東京株式市場では取引時間中として1991年11月以来の2万5000円台を回復した。アメリカの大手製薬会社がコロナウイルスのワクチンについて、「90%超の確率で感染防止の有効性が確認された」と公表したことが原因とみられる。菅首相にとっても、「このままコロナも収束傾向となれば解散しない手はない」(自民長老)ということになる。
ただ、株高を牽引するアメリカも、トランプ大統領の出方次第では混乱が拡大し、世界経済に深刻な影響を与えかねない。北海道で始まった感染が全国的に広がれば、Go To トラベルキャンペーンを押し進めてきた菅首相への批判につながることは避けられない。
こうしてみると、政界で現実味が増しつつある年明け解散論も、「あまりにも不確定要素が多すぎる」(自民幹部)。臨時国会は12月5日が会期末で、「主要野党が内閣不信任案を出すかどうかも、年明け解散の可能性を占うカギになる」(同)とされる。「すべてが永田町の駆け引きばかりで、コロナ禍におびえ続ける国民の声は無視されている」(首相経験者)とみられるだけに、菅首相が首尾よく伝家の宝刀を抜けるかどうかは「正月明けまでわからない」(同)というのが実態だ。
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