大統領選後の株価予測で必ず押さえるべき真実 この「ドル安円高局面」はいつまでも続かない?

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とすれば先週の株価上昇は、アメリカ大統領選挙を前に、思惑から買いがかさんだら、思いのほか株価が上振れしたので、追随買いが膨らんだ、というところではないだろうか。それならば、早晩その勢いはいったん失われ、日米等の株価は短期で反落する、もしくはいったん膠着状況に陥る、と想定される。

前号コラムでの「日米等の株価がボックス圏を上に離れても、一気の上昇とはなりにくく、「二進一退」でじわじわと水準が切り上がるような展開ではないだろうか」という見通しは、大枠は変わらない。

具体的な水準としては「今年末の日経平均株価の居所としては2万4000円前後、来年6月末は2万6000円程度を予想している」と述べた。

これだけ足元の日経平均株価が大きく上振れすると、年末の日経平均株価の予測値としては、2万4500円辺りに上方修正した方がよいのだろう。ただ年末の居所は、2021年の一段の株高への通過点に過ぎず、そうした株価上昇トレンドを年末というタイミングで切ると、所詮「途中でどこに株価がいるか」という議論に過ぎない。

今後は米ドルも日本円も下落する?

一方、株式から外国為替に目を転じると、先週は全面的な米ドル安が進んだ。対円では1ドル=103円割れもあるかどうかという値動きになっている。

これまでは世界的な不透明感から、「頼れるものはアメリカへの投資」とばかりにアメリカ市場に資金が流入し、それが米ドルを支えてきた。しかし、足元では述べてきたようにリスク回避的な姿勢が投資家の間で薄らいでいるため、従来の反動で米ドルがユーロなどの主要通貨に対して下落するのは、理解できる。そうしたユーロ買い・米ドル売りが、対円でも米ドルを押し下げたのだろう。

しかし日本円も、リスク回避の様相が強まった際に、理由なく買われる代表的な通貨だ。今後は日本円も米ドルと同様に、一段の下落傾向に向かうと予想する。すなわち、世界市場に明るさが広がることで「非米ドル先進国通貨>米ドル≧日本円」、といった強弱になるだろう。ただし、さらに新興諸国通貨に買いが広がるには、まだかなりの時が必要だと考えている。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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