アメリカの大学で進む驚愕の「コストカット」 あのハーバード大学でさえ1000万ドルの赤字

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アメリカの大学では、スポーツプログラムの廃止、キャンパス施設の建設延期、事務局やカフェテリア職員のレイオフなどの引き締めが何カ月と続いている。さらにハーバード、プリンストン、UCバークレーなどの一流研究大学を含む多数の大学院博士課程では新たな学生の受け入れが中止された。コロナ禍で博士候補の研究に一段と多くの時間がかかるようになり、大学側の支援予算がきつくなっているためだ。

大学の予算配分状況を集計している「クロニクル・オブ・ハイヤー・エデュケーション」のデータベースによると、中止となった博士号プログラムは100を超える。例えば、ペンシルベニア大学教養科学大学院は、大学側が学費などを負担する博士課程の学生を来秋は新たに受け入れない予定。ライス大学も人文科学大学院が持つ5つの博士課程すべてで新規の学生の選考を停止した。

中止された博士課程の多くは、社会科学や人文科学に属するものだ。これらの課程では通常、企業や財団、連邦政府などによる外部資金ではなく、大学が自ら学生に対する複数年の資金援助を引き受けている。すでに博士課程に在籍している学生の支援を継続するために、新たな学生の受け入れを中止しなければならなくなった、というのが大学側の言い分だ。

これからが本当の難所

しかし、大学院協議会のスザンヌ・オルテガ会長は、博士課程に空白期間ができると高等教育を担う人材に長期的な悪影響が出かねないと指摘する。学術的に将来が有望視されていても経済的な理由から学者の道をあきらめなければならなくなる学生が増える、というわけだ。そうなれば、ただでさえ課題となっている教員の多様性は高まらず、むしろ後退しかねない。

大学はあらゆる経費削減に着手しており、大きく支出をカットできる領域はもはや「人件費」しか残されていない状況だ、と大学の経営スタッフは口をそろえる。人件費は通常、高等教育機関にとっては最大の支出項目だ。労働統計局の発表によれば、新型コロナの感染が拡大し始めた2月以降に大学が進めた人員削減は30万人に達する。大半が教員以外の職だ。

高等教育機関の財務責任者向け専門組織、全米大学実務者協会でコンサルティング及び事業開発担当のバイスプレジデントを務めているジム・ハンドライザー氏は「予算を3度、4度、5度と見直している大学もある」と話す。

「(予算の見直しは)次の段階に入っているが、手を着けられる部分はもはや職員しか残されていない。多くの大学は、これから最も苦しい局面に足を踏み入れることになる」

(執筆:Shawn Hubler記者)

(C)2020 The New York Times News Services

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