アメリカの大学で進む驚愕の「コストカット」 あのハーバード大学でさえ1000万ドルの赤字
14ある同高等教育システムのキャンパスは、かつて石炭産業を中心としたペンシルベニア州の労働者階級の町で、社会的流動性の要となっていた。労働者階級に中産階級となる機会を提供していたということだ。しかし、入学者数は過去10年間で約2割減少。傘下大学の統合は以前から検討されてきたことだが、コロナ禍の赤字で一気に緊急性が高まった。
このような圧力は、パンデミックが始まってから数カ月のうちにアメリカ中で臨界点に達した。ワシントン州からコネチカット州に至るまで、あらゆる州政府が財政の引き締めを進めており、公立大学も予算割り当ての大幅な縮減に備えるよう求められた。
失業率が急激に高まる中、学生とその家族は大半がオンラインとなった大学教育に通常の学費をフルで支払うことに二の足を踏んでいる。大学進学を遅らせて別のことに時間を使うギャップイヤーを選んだり、自宅に近くて学費の安い学校で学ぶ選択をしたりする人が増えている。
ハーバードの大学基金も赤字に
感染対策で大学の経費も膨らんだ。大学は学生のウイルス検査、追跡、隔離に数百万ドルという資金を費やしているが、それでも集団感染は止まらない。ニューヨーク・タイムズのデータベースによると、大学では今年21万4000件の感染が確認され、少なくとも75人が新型コロナで死亡している(学生以外が春に亡くなったケースが多いとはいえ、ここには最近死亡した学生の数も含まれる)。
アメリカ学生情報センター研究所の報告によると、新入生の数は昨年に比べ16%超減少した。学部生の数は全体として4%減っており、授業料収入の低下を招いている。
アメリカ教育協議会などは先日、議会に宛てた書簡の中で、学生向け支援金の増加、寮関連収入の減少、スポーツ関連の逸失収入、感染予防対策および学習関連テクノロジーの導入経費などによる高等教育機関の収支悪化は1200億ドルを超える、という試算を示した。
大学基金に対する寄付も、一部の大規模なものを除いては使途が限定されているため、大抵の場合、大学が非常時の資金として自由に使うことはできない。ハーバード大学はアメリカ最大の基金を有しているが、先日公表された年次報告書によると、2019会計年度に3億ドルを超していた黒字がコロナ禍で一転、2020年度には1000万ドルの営業赤字となった。このため、ハーバード大学も採用の凍結、設備投資の削減、経営幹部の報酬カットを余儀なくされている。