富士、さくら、はやぶさ…名列車「愛称」大百科

写真で見る往年の特急ヘッドマークの数々

1964年10月に東海道新幹線が開業すると、「ひかり」「こだま」が東京―新大阪間を最高時速210kmで結んだ。「ひかり」は光の速さ=最高のスピードをイメージした命名だが、実はそれ以前、キハ55形ディーゼルカーによる九州内のローカル準急にも命名されていた愛称だ。

「こだま」は光速に次いで速い音速のイメージだが、こちらは1958年に日本初の電車特急として登場した東京―神戸間の在来線特急「こだま」の名を引き継いだ。首都圏から大阪に日帰りで「行って戻ってくる」というイメージからの命名だった。

現在の最速列車である「のぞみ」の命名にはこんなエピソードが残っている。命名に当たっては有識者会議の席上で「きぼう」がほぼ内定していたものの、選考委員として同席したエッセイストの阿川佐和子さんが、鉄道ファンでもあった父の作家阿川弘之さんにそのことを告げると「日本の列車名はすべて大和言葉で付けられてきた」とのアドバイスを受け、後日会議の席上で「きぼう」を大和言葉にすると「のぞみ」になりますね、と発言して「のぞみ」の名が誕生したというのだ。

海外の愛称付き「名列車」

海外にもさまざまな愛称の付いた列車がある。代表格はイギリスの「フライング・スコッツマン」だ。日本ではまだ江戸時代の1862年にロンドン―エディンバラ間を結んで走り始めた急行列車で、世界で最初に愛称名を冠した列車と言われる。スイスの観光列車、氷河急行(グレッシャー・エクスプレス、Glacier Express)も日本で広く知られている名前だろう。

1988年、欧州から日本にやってきたオリエント急行を牽引するEF65形電気機関車。オリエント急行のヘッドマークを付けている(筆者撮影)

「オリエント急行」は豪華列車の代名詞として知られるが、列車名そのものは1883年から2009年までパリ―イスタンブール間で運転されていた国際列車の名称で、末期は一般の客車で運転されていた。いわゆる豪華列車として現在運行しているのは、1982年に往年の豪華車両によって運行を開始した観光列車「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス(VSOE)」だ。1988年に来日したのはもうひとつの観光列車「ノスタルジック・オリエント急行(NOE)」だった。

豪華列車では、南アフリカの首都プレトリアから第2の都市ケープタウンまでの1600kmを1泊2日で結ぶ「ブルートレイン」、オーストラリアの大陸横断列車で太平洋岸のシドニーからインド洋に面したパースまで3961kmを3泊4日(約67時間)で結ぶ「インディアン・パシフィック」も著名な列車だ。

一方、かつては名声を誇ったものの消えた列車名もある。ドイツを代表する国際列車だった「ラインゴルト」はリヒャルト・ワーグナーの楽劇「ラインの黄金」からの命名。1929年から1996年までパリ―アムステルダム間で運行されていたフランスの国際列車「エトワール・デュ・ノール」も忘れられない名前だ。「北極星」という意味で、のちにJRの「北斗星」の命名にも影響を与えたという。愛称名の興味は尽きないところだ。

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