「鬼滅」でダイドー缶コーヒーが大ヒットの事情 発売3週間弱で販売数量5000万本を売り上げる

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コーヒー飲料は原材料が果汁などと比べると安く、容器も缶だと製造コストが低いため、メーカーにとっては利益率の高い商品となる。業界では「ドル箱商品」と位置づけられている。ダイドーでは売上高、販売数量ともに国内飲料事業の半分をコーヒー飲料が占め、中でも缶コーヒーを柱の商品としてきた。

ところがここ数年、その缶コーヒーは苦境に立たされてきた。2013年ごろからコンビニで挽き立てのコーヒーが手軽に味わえるようになったことに加え、ペットボトルコーヒーが大ヒットするなどコーヒーの飲み方が急速に多様化。缶コーヒーの販売数量は減少が続き、業界団体の全国清涼飲料連合会の統計でも、ペットボトル容器のコーヒー飲料が増える一方で缶コーヒーの生産量は減っている。

ダイドーは「詳しい数字は言えないが、缶コーヒーに使われるSOT缶(プルタブの付いた缶)の販売数量は、当社に限らず市場全体で前年比2桁減が毎年続いている」(広報担当者)と話す。

自販機経由の販売活性化も狙いに

今回の鬼滅コラボ缶は、ダイドーの国内飲料事業の売り上げと販売数量で8割を占め、全国に27万台設置している自動販売機チャネルの活性化も企図されている。同社の自動販売機経由の売り上げと販売数量は2017年度以降、前年度割れが続いている。

飲料メーカーからすると、メーカー希望価格で売ることのできる自動販売機から得られる利益は、ほかの販売チャネルよりも高い。コンビニでの販売は、棚を確保するために販促費などのコストがかかり、ドラッグストアやスーパーでの販売は大量販売できる反面、安値販売のために飲料メーカーの利幅が小さくなるからだ。

さらにはコンビニなど経由での販売拡大も狙う。「缶コーヒーを飲む人の多くは40~50代の男性だが、『鬼滅の刃』のファンは子どもから大人までと年齢層が幅広い。これまで自動販売機で購入しなかったような女性や子どもにも飲んでほしい」と同社は期待を込める。

SNSでは、缶コーヒーに無縁だった高校生などの若者や女性ユーザーが「鬼滅缶」について言及している。全種類を揃えた画像や「子どものために初めて買った」という新規ユーザーの投稿も見られ、コラボ効果は現れ始めている。鬼滅の刃は、ダイドーの「柱」である缶コーヒーを救うのか。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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