「金髪、革ジャン」異端のIT起業家が描く野望 ベトナム人エンジニア1200人率いて急成長
ベトナムでこれまで通りの業務を続けながら、日本で上場準備を進める生活はハードだった。例えば、小林はサンアスタリスクの創業メンバーでありながら、同社株を1株も所有していなかった。
「清貧アピールするつもりはないが、本当に(株式上場に)興味がなかった」が、上場後を見据えて小林に8.8%の株式を移動させた。サンアスタリスクは2019年12月、農林中央金庫を引受先に10億円の新株発行を発表。さらには日本マイクロソフトと新規事業開発で連携するなど、上場後の成長戦略の準備に追われた。
しかし、2020年に入ってコロナ禍が世界中を襲い、サンアスタリスクを取り巻く環境は一変した。日本では上場申請を取り下げる企業が急増したのだ。
コロナ禍で向き合ったベトナムとの差
コロナ禍でもビジネス自体に支障は出なかったが、小林は苦しんでいた。ベトナムに渡航できず、日本に1カ月以上も足止めを食らった。「ベトナムは今日より明日がよくなると、みんなが未来を見てキラキラしている。日本は国にビジョンがないし、寛容さが感じられなくて。みんな不安だから国の動き1つ1つにビクビクしている」(小林)。
小林はこれまで、ベトナムの空気を思う存分に吸いながら働いてきた。ベトナム人社員と飲みに行くと、「世界一のIT企業になろう」「大事なのは世界平和でしょう」と本気で共感しあえる。これが日本ならば「そんなこと無理でしょう。具体的にどうするんですか」と冷めた目で指摘されるのが関の山だ。
サンアスタリスクでは、ベトナムで醸成された社風が日本へ逆輸入されており、「日本のメンバーも本気度が高く、冷めていない」という。成長著しいベンチャー企業と一緒にサービスを開発するという事業特性も影響しているのだろう。2019年末に60人だった社員数は、2020年9月末時点で130人へ倍増した。
自ら起業しなくても、「企業との事業連携でゼロから事業に関われる」(小林)という同社のビジネスモデルが入社志望者を引きつけ、スタートアップ企業の元CTO(最高技術責任者)やコンサルタント出身者など、さまざまなキャリアを持った人材が中途入社してきている。
コロナ禍のいま、日本社会では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が急速に進む。サンアスタリスクの株価は初値1209円に対し、9月以降は3000円前後で推移している。
2020年12月期は売上高51.2億円(前期比13%増)、営業利益7.1億円(同49.8%増)を見込み、現在、日本とベトナムが中心のビジネスを、カンボジアやフィリピンへ拡大していく。
「僕は社会を良くするためにビジネスをやっている」と小林は断言する。株式上場を果たしても、目指すゴールはずっと先にある。(敬称略)
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