ムスリマ(イスラム教徒女性)の衣装を法律で規制するべきか--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト
すべての市民が確実に優れた教育を受けるようにすることで、対立の要因を減らすことができる。また、ユーモアのセンスも重要な要素だ。最もウイットに富んだ広告の一つに、ドイツのランジェリーの広告がある。
このコマーシャルには美しい女性が登場し、鏡の前でポーズをとっている。黒いパンティとガーター付きのストッキングを素早くはき、それからおもむろにブルカをつけ顔を隠す。彼女は窓から外を眺める。目にはマスカラがつけられている。マスカラのブランド名の“タグライン”である。そして「誰にとっても、どこでもセクシー」というナレーションが流れる。
このCMはユーモアがあるだけでなく、非常にうまく作られている。私が中東で観察したことからいえば、この広告は現実を映し出している。フランスの共産党の議員が言っているように、ブルカを着た女性が過激派やテロリストの一味であると想像することはできる。だが同じことは、ジーンズをはいた男性、あるいはビジネススーツを着た女性についても当てはまる。私たちが忘れていることは、ブルカを着た女性も普通の女性にすぎないということである。
Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。
(週刊東洋経済2010年3月6日号)
image:Fabbio Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 BY SA
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