川勝知事が追及しない「日本学術会議」選考の謎

静岡県にとってはリニア同様見過ごせない

静岡県浜松市出身の天野教授は、2014年に青色発光ダイオードの発見で中村修二、赤崎勇の両氏とともにノーベル物理学賞、文化勲章を受章した。2015年には静岡県民栄誉賞を受賞しており、静岡県民にとって「優れた研究又は業績がある科学者」にこれほどふさわしい人物はいない。

ところが、天野教授を会員名簿で探したが、見当たらないのだ。ノーベル賞受賞者にもかかわらず「日本を代表する科学者」ではないことに驚いてしまった。ほかの会員はノーベル賞受賞者よりも「優れた研究又は業績」を持っているのだろうか。

一方、ニュートリノ振動の発見で2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章・東京大学卓越教授は2017年10月に会員に就任、本年度からは日本学術会議会長に選ばれた。2人とも年齢はほぼ同じで、同じノーベル物理学賞を受賞しているのに、その違いは一体何なのか誰もわからないだろう。

もし、天野教授が推薦されていて菅首相が任命拒否したならば大きな問題となるに違いない。しかし、そもそも天野教授は会員リストに含まれていないのだ。菅首相もそのような選考過程に疑問を抱いたのだろう。

川勝知事の菅首相批判を県民の多くが問題視、1000件以上の批判が県に寄せられている。知事は「秋田に生まれ、東京に行って夜学に通い、学位を取られ、その後政治の道に入った。言い換えると学問をされたわけではない、学位を取るために大学を出られた」など学歴差別につながる発言をしたから、多くの県民が怒るのもやむをえない。

知事は選考過程の「全面公開」を求めるべきだ

10月16日、自民県議団が抗議に訪れると、知事は「学歴ではなく、学問を大切にしていないから批判した」と弁明し、「夜学に通った」は事実誤認で撤回したが、「学問の自由を保障されなければならない」として任命拒否を問題にする立場は変わっていない。

川勝知事は菅首相の学歴ではなく、日本学術会議の本質的な問題をきちんと調査すべきだ。そして、研究、学術部門では初となる県民栄誉賞を与え、最高の敬意を表した天野教授が会員になっていないのだから、知事は「優れた研究又は業績」の評価が不当であり、同会議の選考過程が公開されていないとして全面公開を求めるべきだ。川勝知事はリニア工事に伴う大井川の流量減少問題をめぐる国土交通省の有識者会議について、会議の全面公開を繰り返し求めているのだから、日本学術会議についても選考過程の公開を求めてほしい。

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