川勝知事が追及しない「日本学術会議」選考の謎 静岡県にとってはリニア同様見過ごせない
静岡県の川勝平太知事はリニア中央新幹線の静岡工区着工を認めない一連の発言で、全国的な存在感を発揮しているが、菅義偉首相を批判する発言でもメディアをにぎわしている。
川勝知事は10月7日の定例会見で、菅首相が日本学術会議の新会員候補6人の任命を拒否したことについて、「菅義偉という人物の教養レベルが露見した。学問立国に泥を塗るようなこと」など痛烈に批判した。川勝知事は「(リニア問題で)国論を巻き起こす」と宣言しているが、静岡県知事としては、単なる菅首相批判ではなく、日本学術会議の組織としての不透明さを明らかにしたうえで、同会議のあり方について問題提起すべきだった。なぜなら、静岡県出身で初のノーベル賞受賞者、天野浩・名古屋大学教授は日本学術会議の会員ではないからだ。静岡県にとっては見過ごせない問題だ。
会員選考過程も不透明
内外に向けて日本の科学者を代表する機関、日本学術会議は全国87万人の科学者の中から、人文・社会科学(70人)、生命科学(70人)、理学・工学(70人)の3分野210人の会員と約2000人の連携会員によって構成される。同会議は「政府に対する政策提言」、「国際的な活動」、「科学者間ネットワークの構築」、「科学の役割についての世論啓発」の4つの役割を担っている。会員はそれぞれのテーマごとに委員会、分科会を設けて議論、年2回、総会を開いて、会議としての方向を決める。連携会員は委員会、分科会へ出席して、職務の一部を担う補助的な役割を持つ。同会議は個別の学問、研究をする機関ではない。
本年度は政府から総額約10億円の予算があてられた。会員は任期6年で3年ごとに半数が交代していく。70歳定年。会員・連携会員の推薦に基づいて、会員は首相が、連携会員は会長が任命する。
会員候補の資格要件は「優れた研究又は業績がある科学者」。3年ごとの改選で1人の会員が2人まで候補者を推薦できる。会員からの推薦リストに基づいて、会長、3人の副会長、3分野の部長等の16人で構成する選考委員会が、新会員候補を決める。委員長は会長が務める。不透明なのは、推薦された候補者の選考過程である。推薦者も選考過程も公開されていないので、どのような判断で会員が決まったのかまったくわからない。
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