今「売上高150%の店」に見えている商売の本質 「テイクアウトが人気だから」では決してない

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2つ目には、その顧客への「働きかけ」だ。先のバーも、ただ単に店頭に「テイクアウト始めました」と張り紙をしたのではなく、テイクアウトの開始に先んじて、「バー〇〇(店名)史上最強の危機!」というメッセージハガキを出した。

先のレストランも、宅配弁当を始めることを顧客に早々に告知し、中身を考える過程、料理を試作していく過程などもSNSや動画でシェアし、「注文したくなる」雰囲気作りを行っていた。世の多くの飲食店は、もっと「働きかけ上手」になる必要がある。

そして3つ目は、「顧客リストの整備」だ。顧客リストがなくても、今日、SNSなどを通じ発信はできる。しかし今回例に挙げた店だけでなく、このコロナ禍でも底堅い業績の店は、顧客リストを通じ、さまざまな働きかけを行っている。

ここで重要なことは、「顧客に直接働きかけられる状態であること」。そして「リストとして整備されていること」で、誰が反応したのか、誰が来続けてくれているのかがわかることだ。

これまでの常識が通用しなくなった時代に

この3つの対策を十分にできていないお店や会社は多い。無理もない。今回成功例としてあげた先のレストランやバーも、以前は、料理人やバーテンダーとしての知識と腕にすべての経営資源を投入していた。和菓子店ではひたすらに商品開発に集中していた。

言い方を変えれば、そこさえできていれば、モノさえよければ、商売は盤石だと思っていたのだ。

しかし、それだけで生き残ることはできない。今回のコロナ禍はそうした真実を明らかにした。ウィズコロナ・ポストコロナの時代にも揺らがない強さを持つために、多くのビジネスにおいてこれらの視点がますます重要になっている。

小阪 裕司 オラクルひと・しくみ研究所 代表/博士(情報学)

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こさか ゆうじ / Yuji Kosaka

山口大学人文学部卒業。1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「感性」と「行動」を軸としたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県から約1500社が参加。2011年工学院大学大学院博士後期課程修了、博士(情報学)取得。著書は『価値創造の思考法』など計39冊。 公式サイト https://kosakayuji.com/

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