予防接種した人もウイルス感染する例がある訳 ワクチンさえ打てば万全と考えるのは間違いだ
たとえばインフルエンザウイルスだけでも「型」は数種類あり、予防接種をしたとしても、基本的にはその型のウイルスを倒す抗体しかできません。ですから別の型には効力が期待できないのです。実際「ワクチンを打っていてもインフルエンザに感染した」という話を耳にした方も多いのではないでしょうか。
ウイルスの型の違い以外にも、体内に抗体が十分できるまで2週間ほどかかるため、接種直後に感染する可能性はあります。そしてインフルエンザの抗体は3カ月ほどで減り始めるため、接種後にどれくらいの日数が経ったかも関係してくるでしょう。しかも抗体のできる量には個人差があり、少量しかできなければ、ウイルスの拡大を完全には抑えられず発症はするが、症状は軽減されるというパターンもあります。
そもそもワクチンのないウイルスは、たくさんあります。たとえば一般的な風邪や胃腸炎などはウイルスを倒すための抗体ができにくく、しかもほとんどが軽症ですみ自然に治るため、開発する意味があまりないからです。
なぜ薬が開発されないウイルスがあるのか
「体内への侵入を防げなかったウイルスは、薬でやっつければいい」
こんな意見もあるでしょう。たしかに、薬で撃退できれば問題は解決します。しかし現実には、ウイルスそのものにダメージを与える薬が存在しないケースのほうが圧倒的に多数です。
ウイルス性の風邪を引いて病院に行くと薬を処方されることがありますが、これは風邪の原因ウイルスを攻撃するためのものではありません。ウイルスと免疫細胞の戦いで生じた「症状」を緩和する薬です。
高熱が出れば解熱剤を、せきがひどければせき止めを、お腹の調子が悪ければ胃腸薬を処方されますが、これらは、あくまでつらい症状をやわらげるためのもの。根本原因であるウイルスに効く抗ウイルス薬があるのは、インフルエンザやヘルペスなど、ごく一部です。風邪の原因となるライノウイルスや、胃腸炎を起こすノロウイルスにはありません。というのもウイルスの種類と型は膨大なので、重い症状を起こさないものにまで莫大なコストと期間を費やして薬をつくるのは現実的ではないからです。
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