タクシー最大手「苦しい地方」で営業を続ける訳 第一交通社長「すべてが儲かる仕事ではない」

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――地方、特に過疎地はコロナ以前から収益的に厳しい状況が続いています。撤退する選択肢はないのでしょうか。

たしかに、地方は高齢化が進んでいくばかりで、新しい人も入ってこない。地方の1台あたりの収入は東京の半分くらいのところが多いが、費用の部分で違うのは時給と固定資産税くらい。

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だからUberだって最近は全然地方交通をやってない。DiDiも今年は営業エリアを整理している。タクシーの売り上げが1日1万5000円だとして、手数料収入が仮に10%なら1500円。1000回仕事があればいいけどそうはいかない。

10年ほど前、過疎地などの交通の足となるおでかけ交通は赤字だしやらなくていいと思っていた。しかし、こういう地域を見捨てれば、タクシーのお客さんもいなくなっていく。グループ全体で儲かればいいわけで、全部が儲かる仕事ではない。定額運賃や、おでかけ交通のような取り組み、自治体との連携、買い物代行などやれることはなんでもやっていかなければならない。

巨大なデータベースを作りたい

――配車アプリの競争も過熱しています。タクシー業界にどういう影響をもたらしますか。

タクシー業界以外も含めてインナーサークル化が進んでいて、コロナでそれが加速していくとみている。会員制クラブのような緩やかなつながりの中だけでデータが蓄積され、それを利用するサービスが提供されていく。ここで重要なのはただその中に組み込まれてしまわないこと。そのときに、「(プラットフォーム側から)お宅のデータも貸してくれる?」と言われる存在でいないといけない。

本音を言えば、巨大データベースを自分たちで作りたい。だが、タクシーから得られるデータ量は知れているのでなかなか難しい。だから、配車アプリのUberやDiDi、MOV(現モビリティーテクノロジーズ)やトヨタ、デンソーとも付き合っている。緩やかなつながりなので、あちこちに入っておくこともできる。変化の流れに乗り遅れないようにしないといけない。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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