N-ONEが前例のないモデルチェンジをした理由 外観を変えず中身だけを刷新した新型車の意味

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先にデビューしたN-ONEの販売は、それほど悪いものではなかったが、やはり間口は狭かったと言える。そこをカバーするために用意されたのが、N-WGNであろう。販売の数字を見れば、N-WGNデビュー直後の2013年度こそN-ONE(8万2791台)とN-WGN(7万2548台)とN-ONEが上回るが、その後は、常にN-WGNの方が数多く売れるようになる。

N-WGNは2019年にモデルチェンジして2代目となっている(写真:ホンダ)

先代N-WGNのモデル末期となる2018年度では、N-WGNの年間販売台数5万6599台に対してN-ONEは1万5477台にとどまる。つまり、販売という意味では、尖った存在のN-ONEだけではつらいため、より幅広い人に受け入れられる薄口のN-WGNが必要だったと言える。

最初は僅差だったN-ONEとN-WGNの販売の差は、最終的には4倍ほどにも広がっている。そのため、昨年のN-WGNのフルモデルチェンジのときは「もう、N-ONEはN-WGNに吸収されてなくなるのではないか?」という予想まであったのだ。しかし、ホンダが出した答えは「N-ONEの存続」であった。

そこで重要となったのが「N-ONEの価値」のさらなる向上、そしてアピールだ。その方策として採用されたのが「ルックスを変えないモデルチェンジ」だったのだ。

10年、20年と続けていければ

「N-ONE」のアイコンとなる丸目のヘッドライトに白いスクエアなハッチバックボディは、「ホンダe」にも通じるところがある。また、2009年の東京モーターショーに出品された「EV-N」や2017年の「Honda Sports EV Concept」も、白いボディに丸目の小さなクルマだ。ホンダといえば、“白く”て“丸目”の“小さなクルマ”というイメージがあるのだろう。

Honda Sports EV Concept(写真:ホンダ)

こういう試みは、10年、20年と続くことが大切だ。同じデザインを踏襲すると言っても、実際は細部を変化させることで、フレッシュさを維持する必要もある。ミニやラングラー、911は、それをしっかりと続けている。N-ONEも同じように、中身は常に最新でありながらもノスタルジックなルックスをこの先、長く続けていけば、きっと新たな地平を切り開けることだろう。

とはいえ、ひとつのことを愚直にコツコツ続けることは、ホンダにとって非常に苦手なことのようにも思える。正直、N-ONEが選んだ道は、ホンダにとって最も困難なものだったのではないだろうか。そんな挑戦にエールを送りたいと思う。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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