「正義に燃える人」ほど他人に危害を加える理由 逆らう者を論破しても得られるものは特にない

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不安の裏には必ず願望があります。自粛警察と呼ばれる人たちは、安全でいたい、健康でいたいという「願望=自分の正義」を脅かされることが怖いために、視野が狭くなり、感染症の実情や他人の事情が見えなくなってしまうのでしょう。まじめに自粛している自分の正義を否定されたくないという願望もありそうです。

正義を口にしたくなるのは、自分の願望が脅かされることへの恐れから生まれるものだということがわかれば、そこで争う必要などなくなります。黙って自分の不安や恐れと向き合い、冷静に願望への対処を考えればいいのです。

争わなければストレスも減る

テレビの仕事をしている頃、何度もオファーをもらっていたのに、自分の中でこれだけは出るのをやめようと決めていた番組がありました。深夜から朝まで討論する有名な番組です。お互いに自分が正しいということを声高に主張し、相手を否定し合う、議論とはほど遠い内容が嫌だったからです。

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視聴者は、論破というよりも、大きな声と矢継ぎ早の口調で誰かが誰かを打ち負かすところが観たいのでしょう。そんな討論ショーに自分が出ても何のプラスにもならないと思って、ずっとお断りしていました。

銀座でクラブ活動(笑)をしていた頃には、知らない男から「あんたの漫画はつまらない」などと絡まれることもありました。

学生時代だったら、正論をかざして相手を論破しようと思ったでしょうけど、「それは失礼しました。これからはもっと面白い漫画を描けるように頑張ります」とあしらって、その場を離れました。

最初から争うつもりがなければ、ムキになることもなく、ストレスを感じることもないのです。

弘兼 憲史 漫画家

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ひろかね けんし

山口県出身。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)勤務を経たのち、1974年に漫画家としてデビュー。現在、『島耕作』シリーズ(講談社)、『黄昏流星群』(小学館)を連載するほか、ラジオのパーソナリティとしても活躍中。

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