映画「テネット」アメリカでコケた予想外の事情

日本では大ヒットも「興行収入赤字はほぼ決定」

なぜクリストファー・ノーラン最新作『TENET テネット』がアメリカでは不振なのか?(写真:公式サイトより)

クリストファー・ノーラン監督の超大作『TENET テネット』が、日本であいかわらず好調のようだ。難解だということからリピーターもいるようで、公開から3週経つ今も、メディアやSNSで話題になっている。

そんな日本の観客には意外かもしれないが、日本より2週間先に公開されたアメリカで、今作はすっかりコケてしまった。ほかに新作がないため、一応ランキングでは1位だが、先週末の興行成績はわずか270万ドルで、2位の再上映作『ホーカス ポーカス』(1993)の190万ドルと、大して差はない。

公開当初こそ、ライバルが少ないことから普段より息長く映画館にとどまるかと期待されていたが、この状況では現在までの総額4500万ドルでほぼ打ち止めだ。比較のために挙げると、ノーランのひとつ前の監督作『ダンケルク』(2017)は、最初の週末だけで5000万ドルを売り上げている。コロナ前なら、4500万ドルは『TENET テネット』が最初の2、3日で売り上げるべき数字だったのである。

日本を含むほかの国ではまずまず健闘しており、全世界興収は3億ドル強。しかし、製作費だけで2億ドルがかかっていることから、4億5000万ドルの世界興行収入があってようやくトントンとのこと。つまり、今作は赤字がほぼ決定してしまったわけで、その足を引っ張ったのは、お膝元のアメリカなのである。

「テネット」がアメリカで大苦戦する理由

なぜこんなことになってしまったのか? 一番の答えは、アメリカで最も重要な市場であるロサンゼルスとニューヨークで、まだ映画館の再オープンが許されていないからだ。

ロサンゼルスとニューヨークは批評家やメディアが集まる都市だが、「映画とは映画館で見るものを呼ぶ」という確固たる信条をもつノーランは、この非常時でも、マスコミに配信形式で試写を見せることをしなかった。

そのため、これら2都市の批評家や業界関係者は、誰も同作を見ていないのである。主要な新聞は、映画館での試写が可能だったロンドン在住の批評家などに依頼して記事を書いてもらったものの、どうせ見られないとなると興味をもつ人は限られるし、当然ながら口コミもない。

次ページアメリカで大苦戦する「2つ目の理由」とは?
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 若者のための経済学
  • インフレが日本を救う
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
世界の投資マネーが殺到<br>沸騰! 医療テックベンチャー

2020年に世界の医療関連ベンチャーの調達額は465億ドルと過去最高を記録。10年間で5倍に膨張し、米グーグルやアマゾン、アップル、さらには中国の巨大IT企業もこぞって進出中です。国内の有望スタートアップ21社も掲載した必読の最新ガイド。

東洋経済education×ICT