GAFA対抗「日本型スマートシティ」に勝算あるか 人口増加を見込む「世界の都市」へ売り込む作戦

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竹中氏は、森ビルが1988年に設立した社会人教育機関のアカデミーヒルズに参画し、2007年からは理事長を務める。さらに森記念財団が2008年に新たに設立した都市戦略研究所の所長にも就任し、その年から「世界の都市総合力ランキング」(Global Power City Index, GPCI)を毎年公表している。

GPCIでは、当初は、ロンドン、ニューヨーク、パリに次いで4位だった東京が、2017年からは3位に浮上。発表記者会見には毎回、竹中氏も出席し、東京など日本の都市がランキング順位を上げるための都市戦略を語るのが恒例となっている。評価委員会には、世界各国の研究者も参加しており、世界の都市の最新動向を情報収集している。

しかし、2019年に著名なビジネススクール、スイスのIMD(国際経営開発研究所)が、スマートシティの国際ランキング「Smart City Index 2019」を公表した。アジア地域ではシンガポール(1位)、台北(7位)が上位に食い込む中で、東京は62位、大阪は63位にとどまった。

GPCI作成の実務責任者である市川宏雄・明治大学名誉教授は「GPCIにもスマートシティの要素を取り込む必要があるだろう」との認識を示す。しかし、評価方法の見直しを行えば、東京など日本の都市の順位が大きく下がる懸念がある。それを察した竹中氏が、日本のスマートシティ化は急ぐ必要があると考えたのだろう。

スマートシティ実現に立ちはだかる壁

スーパーシティ構想の具体的な施策を検討する過程で、スマートシティの根本的な問題点が浮上した。欧米での先進事例を分析すると、スマートシティの課題は技術ではなく、多くのケースで「コモンズの悲劇」が発生しているためであるとわかってきた。

コモンズの悲劇とは、多数者が利用できる共有資源が乱獲されることによって、資源の枯渇を招いてしまうという経済原則のこと。その対策として有名なのが、中世の欧州農業を支えた「三圃制」だ。二者で農地を乱開発するのではなく、田畑を3分の1ずつに分けて、3分の1は必ず休耕地とすることで、土地の生産性を維持することを狙う。

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