脳科学では「女性管理職は美人だと損」なワケ

一方で「イケメン男性は仕事で得をする」不思議

中野:確かに人間は、相手の大部分を、見た目で判断せざるをえません。「人を見た目で判断してはいけない」などと言われますが、そもそも見た目で判断してしまうものだからこそ、そう諭されるのでしょう。実際、相手の人物像は、見た目以外に判断できる材料がほとんどないのです。

ただ私たちは、自分と似たような人を見つけると、「あの人は私と同じ匂いがする」などと表現したりもするので、匂いや声の調子などでその人を判断することはあります。が、視覚から入ってくる情報はものすごく多いので、視覚でその人の印象が左右される部分がやはり大きいようです。

「この人は美しい」「ステキだ」と見た目で判断している脳の領域とほとんど同じ領域で、人間は、「正しい」「正しくない」という判断も同時に行っています。このため、美しさの基準と正しさの基準が混同されてしまうという現象も、たびたび起こってしまいます。見た目のいい人が得をする理由が、ここにあります。

笑顔を鍛えると「見た目」を超越する

中野:実際に、実験でも確かめられています。容姿の魅力度が高いと判定された人は、そうでない人が活性化させたのとは異なる被験者の脳機能領域を、活性化させたのです。その領域は、さきほど述べた、「美しい」を判断する領域でした。

ただ、見た目が悪いというだけで、人生を諦める必要もありません。この同じ実験のなかで、容姿の魅力度がさほどでもなかった人たちでも、笑顔であれば、容姿の魅力度が高かった人たちが活性化させたのと同じ被験者の脳機能領域を活性化させることができたのです。

ですから、見た目が大切だなんて身も蓋もない、と落胆する前に、もし容姿に自信のない人がいたら、そんな人ほど、笑顔を鍛えることが大切なのです。ステキな笑顔は日々の練習で身に付くものなので、頑張ってもらいたいものです。

1960年代にアメリカで行われた調査では、服役している囚人に整形手術を行った群と、そうではない群とでは、再犯率に差がついたという報告もあります。これは、職業訓練よりも効果が高かったということで、ややショッキングなデータでもあります。

実際には、顔に付いた傷痕を除去するといった施術を行ったようなのですが、この調査結果は、服役していた人々が見た目によって判断され、この人は罪を犯すに違いないといった周囲からのステレオタイプな脅威にさらされることで、罪を犯すリスクがより高まったのではないかということを示唆しています。

性差の話に戻りますが、女性はどうしても、出世に対するインセンティブが、男性とは異なったものになってしまうと思います。

私も含めて女性研究者は、多かれ少なかれ同じような経験があると思うのですが、例えばどんなに優れた論文を書いても、「ところで、あの人は子どもを産んだのかね」などと言われてしまいます。それだけでなく、いまでも、「ご主人がかわいそうですね、奥さんがこんなに活躍していると」などとも言われます。

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しかも、研究者から言われるだけでなく、なんと私を講演に呼んだ人が言うこともあるのです。そうした嫌みを受けることも多くなるので、男性ほどには、出世することに対するインセンティブは高くないと思います。出世すればするほど、どんどん風当たりも強くなるので、ちょっと面倒くさくなってしまうところがあるのです。

では、脳そのものに性差はあるのでしょうか? 実は性差よりも個人差のほうが大きいという共通見解が、研究者たちのなかにはあります。

身長を例に取ってみても、男性と女性では平均身長に違いがあります。158センチの人だと聞くと、なんとなくその人は女性かなと思ってしまうのですが、158センチの男性もいます。逆に女性でも、180センチを超える人がいます。

脳も同じ。個体差のほうが性差よりも大きいという考え方が、研究者のあいだでは主流です。

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