静岡リニア「JR非公表資料」リークしたのは誰だ 怒り心頭の川勝知事発言はマッチポンプか

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あとで詳しく紹介するが、今回のスクープ記事に掲載された“非公表資料”は、県専門部会委員も県担当者もすべて承知している内容だ。県の「南アルプス自然環境有識者会議」(現在の地質構造・水資源専門部会、生物多様性専門部会)でも何度か取り上げられている。

昨年の記事に『JRは目的外の使用を避けるよう県に求め、県は「公表できない」(くらし・環境部)としている。』とあるから、そのとき、県は静岡新聞に資料を提供しなかったようだ。それから1年たって、誰かが“非公表資料”をリークしたのである。

知事は1年前のことをすっかりと忘れたかのように、23日の会見で「非常に不愉快だ」と語気を強めた。県関係者のすべてが承知している情報が新聞記事になったくらいで、「不愉快」発言とは“自作自演”かと、疑いたくなる。

資料は段ボール箱10箱分

発端となった「メモ」は、2018年10月、JR東海が県に提供した段ボール箱10箱の河川流量や水収支解析に使った報告書など54冊にわたる膨大な資料に含まれていた。「毎秒2トン減少」というJRの流出予測の根拠を示すよう県に求められ、それにJRが応じた。その中の1つが南アルプスの地質調査データを示した大開きの断面図であり、そこに注釈として「メモ」が付けられていた。

段ボール箱10箱などJR東海提供の資料(静岡県提供)

南アルプスは世界最大級の断層地帯とされるリニア工事の最難関地域である。地質会社の調査でも断面図には東俣川の1カ所だけでなく、10カ所ほど「懸念する」「要注意」などの「メモ」が付けられていた。それでも、同紙はほかの「メモ」は問題にせず、なぜか、たった東俣川の1カ所の「メモ」のみを記事にした。その理由は昨年10月の記事を読めば、はっきりとわかる。

それは、東俣川直下の断層を問題にする専門家がいるからである。

今回の記事では、南アルプスの地質に詳しい研究者(実名)の「追加調査の必要がある」という談話が掲載された。この研究者に確認したところ、「私の発言は今回の記事とは関係ない」とのことだった。以前、別の地域に関して指摘したことが、今回の報道価値を高めるために使われたようだ。

JR東海は、県の専門部会委員、県、会議運営の委託会社を対象に資料を貸し出した。資料のデータ化、コピーは許可されていた。

調査会社の資料は、JR東海が南アルプスの特異性等を踏まえてトンネルを施工できるかどうかの判断材料の1つに使われ、施工できるとの結論を得た。「命の水」を守るとして知事が問題にする湧水の県外流出については、不透明な点が多いから、現在、議論が続いている。本当に東俣川直下が問題かどうかは、県委員が指摘するはずだから、専門家会議の議論に任せればいいのだ。

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