エヌビディア、4.2兆円買収で狙う覇者の地位 ソフトバンクGから半導体設計アームを買収
ではなぜ、これほどまでに市場の評価が高いのか。それは、エヌビディアが得意とするGPUがAIなど次世代の技術で大きな役割を果たしていることが関係している。
GPUには「コア」と呼ばれる演算回路が多数含まれている。インテルなどが作るCPUと比べて演算能力は劣るが、画像を高速で処理できる。こうした技術が近年、ゲーム以外の分野でも使われるようになったことが、エヌビディア飛躍のきっかけとなった。
その1つがデータセンター向けだ。データセンターでは単純な計算を素早く行えるGPUが不可欠。世界中でやりとりされるデータ量が増えるのに伴い、増え続けるデータセンター需要を取り込んでエヌビディアは業績を大きく伸ばした。コロナ禍での逆風をものともせず、2020年5~7月期にはデータセンター向けの売上高が初めてゲーム向けを上回った。
AI向け半導体の開発で注目
さらに、一層の飛躍に向けて力を入れているのがAI向け半導体だ。自動運転には高いレベルの画像認識や瞬時の判断が不可欠で、GPUはそうした分野で高い性能を発揮するとみられる。6月にはドイツのメルセデス・ベンツと車載コンピューターシステムの共同開発で合意し、2024年にはソフトウェアでアップデート可能な自動運転機能を搭載した自動車を出荷する予定だ。
買収されるアームもAI向け半導体の開発で注目されている。エヌビディアと異なり、アームはCPUなどの基本的な設計を半導体企業に提供し、ライセンス料を徴収するのがビジネスモデルだ。CPUなどのプロセッサー(演算装置)のうち、アームの基本設計を使っているものは34%に達する。
アップルのiPhone向けCPUのほか、日本の半導体大手・ルネサスエレクトロニクスも2019年10月にアーム基本設計の産業用マイコンを発売した。「アームの構造を使うとソフトウェアやほかの半導体とのすりあわせがしやすいという顧客からの声が強かった」(ルネサス)という。
インテルの牙城であるパソコンやデータセンター向けにもアームは進出している。2019年12月、アマゾンはデータセンター用にアームの基本設計を使ったCPUを発表。2020年6月にはアップルがノートPC「MacBook」用CPUの基本設計をインテルからアームに乗り換えると発表した。
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