コロワイド幹部が語った「大戸屋買収」の真意 TOB後の子会社化で業績不振を払拭できるか

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――TOB成立に至るまで、大戸屋側は一貫して店内調理にこだわり、セントラルキッチン導入に反対し続けてきました。

われわれは、初めからすべてをセントラルキッチンにするとは言っていない。肉や魚を焼く、盛り付ける、そうしたことは店内でやると言っている。ただ、下ごしらえなど効率化が図れるものはコストを削減する意味でも進めましょうと言っていただけ。つまり以前から大戸屋がやっていたことと何ら変わりはない。

大戸屋側が勝つための戦略として、セントラルキッチンを焦点に据えただけで、決して対立するものではなかった。

──大戸屋の再建をどのように進めていくつもりですか。

大戸屋の業績はかなり厳しいが、幸いにしてブランドは傷ついていない。ただ、値上げをして1000円を超えるようなメニューが多かったり、品質が劣化していたり、提供時間がかかりすぎてお客様に迷惑をかけてしまっている。「安くておいしい定食」を求めているお客様の期待に応えられていないのが現状だ。その結果、3年続けて客数が減少し続けている。

まずは仕入れコストの削減と物流の効率化を図る。仕入れ条件やオペレーション(店舗の運営)などを見直し、(コロワイド)グループと(食材購入などの)スペックを合わせていく。そうすることでスケールメリットを出し、効率化を図っていきたい。今後、成長させていくための原資を作るためにもだ。

消費者のデフレマインドは衰えておらず、品質も向上させながら適正価格に持っていく。もちろん、店内調理を始めとする大戸屋のいいところは残す。コロナ禍で外食市場が大きく変わる中で、定食業態の大戸屋は消費者に求められているからだ。

半年で経営再建できる

──どれくらいで再建できると考えていますか。

新型コロナの影響があって読みづらいところはあるが、半年もあればコスト削減などのシナジー効果が表れ、売り上げが目に見えて伸びてくるのではないか。新型コロナさえなければ、もっと早く再建できる。

大戸屋ブランドは完全に毀損しているわけではなく、(経営上の)課題も明確だ。コロワイドはこれまでM&Aで成長してきたので、(買収先企業の再建)ノウハウもある。従業員の方々にしっかりと現状と今後の方向性を説明し、今の経営陣と協調していけば、経営再建はそんなに難しいものではない。

──コロワイドグループにとって、大戸屋は今後どのような位置づけになるのでしょうか。

コロワイドは今や8割がレストラン事業だ。ただ、焼肉やステーキといった特化型が中心で、そこに定食という総合型レストランが仲間入りする意味は極めて大きい。

最近は病院や介護施設向けの給食事業も拡大させており、そこで大戸屋レベルの給食を提携するシナジーも期待できる。そうなれば大戸屋はさらに発展することができる。

確かにこれまでは経営陣と対立する場面も多かった。だが、TOBの成立で(これまでの対立は)終わった話。これからは大戸屋を再建させていくという目標に向かって、一緒に頑張っていければと思っている。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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