中国の「新興EVメーカー」生き残りに必要な条件 小鵬汽車がアメリカで上場、競争は激化の一途
また、消費者ニーズへの対応に工夫を凝らすことも、熱心に取り組んでいる。消費者はNIOの「充電APP」を通じて中国全土に立地する充電スタンド約30万カ所を検索できる。クルマ購入の初期コストを抑えるEV電池の分割払い制や電池の劣化に対応する電池グレードアップサービスも導入した。
小鵬汽車は急速充電が可能な充電ステーションを全国で197カ所を整備し、充電スタンド計20万カ所をカバーしている。2019年の年末には「NIOパワー」と提携し、充電スタンド及びチャージ情報を相互利用することにより、顧客利便性の向上を図っている。小鵬汽車とNIOのアプリを通じて、消費者は両社の充電スタンドを利用でき、アプリを使用する支払いも可能になる。
さらに、ビックデータで顧客行動の分析やUX(ユーザー体験)の向上に力を注ぐ。スマートフォンアプリのSNS機能を使って、ユーザーとつながることもでき、会員制サービスでのライフスタイルや各種イベントを通じて、顧客の愛着を高めるためのユーザー体験を提供している。
これは顧客のオンライン体験とオフライン体験を融合する「OMO」(Online Merges Offline)戦略である。すなわち、新興EVメーカーはEVの販売にとどまらず、EV購入者に提供するライフスタイルの体験を通じて既存自動車メーカーとの差別化を図ろうとしている。
生き残るのは3社だけ
中国では現在、多くの新興EVメーカーはEVを量産できない状況が続いており、また一部メーカーは品質問題が多発し、消費者の信頼を損なっている。ファンドから追加の資金調達が難しくなっている中、新興EVメーカーは倒産危機に見舞われるだろう。
実際、前途汽車が破綻し、天際汽車と賽麟汽車も大幅なリストラに踏み切った。また博郡汽車は今年6月にEV開発・生産を断念すると発表し、緑馳汽車や遊俠汽車がそれぞれ河南省政府、湖州市政府の傘下企業入りを決めた。丸紅と提携したバイトン(BYTON)は資金繰りの問題を抱え、量産車の投入計画が先送りされる可能性があり、伊藤忠の出資を受けた奇点汽車は第1弾モデルの量産時期を今年10月に延期する見通しだ。
一方、テスラは上海でEV最大生産能力50万台を誇る巨大工場「ギガファクトリー3」の稼動を皮切りに、中国市場の攻略に向けスタートを切った。この先、競争は一層激しさを増し、新興EVメーカーの淘汰は加速するものと思われる。
「生き残る新興EVメーカーは3社だけだ」と、中国大手Eコマース企業「美団(Meituan)」の創業者王興が語った。筆者が取材した小鵬汽車創業者の何小鵬も同様な危機感を露わにした。今後どのようにしてユーザー体験戦略を展開し、外資系自動車メーカーに伍して高品質のEVを開発してゆくか、中国新興EVメーカーの実力が問われている。
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