今の30~40代非正規を待つ「極貧」老後の超不安 年金保険料を十分に払えず給付が期待できない

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厚生労働省の年金局によると2015(平成27)年において、現年度分の納付月数で評価すると63.4%の納付率だったので、36.6%の未納率である。最終納付率で評価するとほぼ10%ポイントの上昇が見込まれるので未納率はほぼ26%前後であろう。以前はこの未納率がとても高かったが徐々に減少したので、好ましい傾向を示していた。しかしおよそ4分の1の人が未納者というのは、無視できない割合である。

制度における第1号被保険者では本書の関心である中年世代を調べるために、年齢別の納付率に注目してみよう。それが次の図である。

30~40代の未納率は40%前後

これは第1号被保険者(自営業者、学生、無業者が中心)に関するものである。この図によると、若年である25~29歳が53.5%と低く、30歳代から年を重ねるにつれて徐々に納付率が上昇している(すなわち未納率は低下)。その後、納付率は40歳代で少し低下するが、その後は上昇を続けて中年後期の55〜59歳では納付率は74.9%(従って未納率は25.1%)にまで上昇しているので好ましいことである。高齢世代になることを間近に控えて、老後所得の心配をする年齢でもあるので納付に励むのであろう。

『中年格差』(青土社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

むしろ気になるのは、中年世代(特に30歳代と40歳代)の未納率40%前後の高さである。厚生年金制度に加入していない人なら国民年金制度には加入して、しっかり保険料を納付しておいて老後の所得を確保しておきたいのであるが、かなりの人が納付していないのである。所得が低い人とか、それのない人が多いので、生活が苦しくて保険料を納付できないのであろう。高齢者になる間際に保険料を払い始めても、納入期間が短いので、年金給付の額が低く抑えられることを覚悟せねばならない。

第1号被保険者の場合には無業の人の他に自営業者が圧倒的に多いので、老後は年金に頼らずに自分の蓄積した貯金で十分に暮らしていける人もいる。しかし、自営業者(特に農業や小商店など)の所得は変動があるし、平均して所得は高額でないので、貯蓄額は一部を除いてそう多額ではなく、そういう人が高齢者になったときの生活は楽ではない。若年・中年のときにできるだけ貯蓄に励んで老後に備えるか、できるだけ国民年金の保険料を払い続けて、老後の年金給付を確実にしたい。

橘木 俊詔 京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授

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たちばなき としあき / Toshiaki Tachibanaki

1943年生まれ。小樽商科大学卒業、大阪大学大学院修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。大阪大学、京都大学教授、同志社大学特別客員教授を経て、現在、京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。その間、仏、米、英、独の大学や研究所で研究と教育に携わり、経済企画庁、日本銀行、財務省、経済産業省などの研究所で客員研究員等を兼務。元・日本経済学会会長。専攻は労働経済学、公共経済学。
編著を含めて著書は日本語・英語で100冊以上。日本語・英語・仏語の論文多数。著書に、『格差社会』(岩波新書)、『女女格差』(東洋経済新報社)、『「幸せ」の経済学』(岩波書店)ほか。

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