今の30~40代非正規を待つ「極貧」老後の超不安 年金保険料を十分に払えず給付が期待できない

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ここで述べたことは、厚生年金の事務代行作業を行っている企業、すなわち従業員から保険料を徴収して、さらに保険料の事業主負担分を加えて、それらを国家に収める仕事をしている企業が、義務通りにそれを行わないという非加入ないし未加入企業を意味している。

中には加入はしているが、資金不足で実際に保険料を拠出していないケースもある。なぜこういう未加入企業が存在するかといえば、保険料の事業主負担分の支払いを避けたいという思いがあるからである。労働費用の節約を図りたいのであり、特に不況のときには保険料拠出をしないという動機の強いことは容易に理解できよう。さらに、極小企業を中心にして事務作業のわずらわしさを避けたい企業もある。

約20年前のデータで少し古いが、荻野博司氏による「事業主負担のあり方を考える」『朝日総研レポート』第172・173号(2004年)によると2002(平成14)年には企業の18%が未加入と報告されていたが、さすが現代では当局の監視の目があるので10%台の前半にまで低下しているとされる。しかしすでに述べたように79万社との報告もあるので、まだかなりの数が未加入である。つまり、かなりの数の労働者が厚生年金制度から排除されているのである。

労働時間の短い人は社会保険制度に加入できない

もう1つ公的年金を含んだ社会保険に加入しない理由として、企業は社会保険制度に加入してはいるが、そこの企業で働いている労働者のうち、労働時間の短い人は加入できないという規定のあることを強調しておこう。法律によると、加入はフルタイム労働者が原則である。

しかし従業員数が501人以上の企業であれば週労働時間が20時間以上の労働者(パート労働を含む)は社会保険加入の義務があるが、20時間未満の労働者は加入が排除されているのである。ただし、従業員数500人以下の企業であっても、労使の合意があって従業員の半数以上の同意の下で、20時間未満の労働の人(パート労働を含む)も加入が可能と2020(令和2)年の法改正がなされた。

ついでながら、この法改正は次の事項を含んでいる。年金支給開始年齢は65歳が原則であるが、選択の幅を60~70歳から60~75歳に広げた。さらに在職老齢年金の60歳代前半の減額基準を、月28万円以上から47万円以上に引き上げた。

つまり週労働時間が20時間未満の人は、原則として社会保険制度に加入できないのである。これは実は以前では資格のない人はフルタイム労働者の労働時間の4分の3未満だったところを、最近になって20時間未満に緩和した結果によるもので、パートタイム労働者もできるだけ社会保険制度に加入するのが好ましいという政策配慮がなされた数字である。

次ページ週20時間未満のパート労働者数はどれぐらいか?
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