大坂なおみを批判する人に知ってもらいたい事 「多様性」の問題は日本人とは全く無縁ではない

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「知りたい」と思っている人々が、黒人に対する社会的不公正や人種差別に対する彼女の見解が、日本のファンに共有されているのか、日本のスポンサーに認められているのか、知りたがるのは、ごく当然である。

彼らは間違いなく今回の件についてツイッターを見るだろうが、(「このツイートを翻訳する」という便利なボタンを押したときに)、そこで何を知り得るのだろうか。

ツイッターに並んだ日本人からの批判

彼女が今回、強烈な注目を浴びることにより、アリシア・ギブソンやアーサー・アッシュのようなテニス界のレジェンドは無論のこと、モハメド・アリ、ビル・ラッセル、ジム・ブラウン、ジェシー・オーエンス、カリーム・アブドゥル・ジャバー、トミー・スミス、ジョン・カーロス、ジャッキー・ロビンソン、さらにはコリン・キャパニックといった名だたる黒人アスリートたちに連なること、そして、疑問を投げかけたアスリートたちの何人かは厳しい処罰を受けたことを知り得るのだろうか。可能性はある。

大坂は決してたった1人で声をあげたわけではない。MLB、NBA、そしてWNBAに所属するチームや、有名アナウンサーまでもが、今こそ社会不正に反対する立場を表明すべきだと判断している。こうした状況は、確実に彼女に影響を与えた。

今年初めに悲劇的な死を遂げたNBAのレジェンド、コービー・ブライアントがまだ生きていたとしたら、今回もいつものように立ち上がり警察の残忍さと不正を非難していたに違いない。大坂はかつてコービーからもらった感動的な文章に強く影響を受けていた。

こうしたすべての背景を彼らは知り得るだろうか。可能性は低い。

実際、大坂が準決勝に出ないことを発表してから、ツイッターには「あなたはもう日本人ではない」「アスリートが政治的立場をとるべきではない」「そもそも撃たれた黒人が悪い」「もうあなたが出ている会社の商品は買わないし、テニスも見ない」といった否定的なコメントが並んだ。

大坂は「警察の手で黒人の虐殺が続いているのを見ていると、正直はらわたが煮えくり返る」とつぶやいたが、「知りたい」と思っている人々は、日本のSNSではこれに対する批判のコメントが圧倒的に多いことを知ることになるのではないか。

ここで、彼らは当然のように疑問に思うだろう。"虐殺"のような非難すべき出来事に立ち向かう彼女がなぜ、支持を失うのだろうか。日本に栄光と名声をもたらしていたときには、臆面もなく支援していたのに、と。

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