安倍氏「健康問題」アメリカはどう見ているのか トランプ、バイデンそれぞれの思惑は?

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国家安全保障上の懸念があるにもかかわらず、安倍首相の有力な後継者であると考えられている自民党員中の誰か1人にでも、バックにアメリカ政府がついているという所見はない。「日本政府も自民党もこれについて自分たちで考えて答えを出していないため、アメリカ政府が後継者について特別な見識を持っているとは思えない」と、トランプ大統領の元安全保障担当者は語る。

「有力な候補者は知られており、基本的に日米関係について従来の考え方をしていると見なされているため、後継者に関して強い希望があると私は認識していない」とこの人物は付け加える。

トランプ大統領の再選に公然と反対してきた、共和党の政策担当者であるグリーン氏は、次期政権は安全保障関連の引き締めを実行する力が弱くなると予想している。「安倍首相の後継者にはまったく期待が持てず、もしかしたら、本当にもしかしたらだが安倍首相がもう一期続投するかもしれない、という切実な希望も聞いたことがある」と、グリーン氏は語る。

「しかし今ではそれは不可能としか思えない。地政学的な意味において日本がこれから進む方向が変わるとは思えない。重要なのは誰が実行できるかだ。そして安倍首相が最初の5年間に行ったような、勢いのある行動ができる候補者はいないと見られている」

トランプ大統領には、会談を行った菅義偉官房長官など個人的な好みはあるのだろうか。

「トランプ大統領は菅官房長官の名前すら知っているかどうか疑わしい」と、歴代政権で活躍したアジアの安全保障の専門家は語る。「本人は安倍首相の続投を望んでいるだろうが、11月3日(アメリカ大統領選挙日)まで何かを気にしている余裕があるとは思えない」。

バイデン氏が日本に関心ないのは明白

一方、民主党大統領候補のバイデン氏が、日本の政治状況に対しあまり時間をかけていないのは明白だ。しかしバイデン氏の周囲には、同盟関係に詳しい経験豊富なアジア政策アドバイザーがおり、トランプ氏の「アメリカ第一主義」の孤立主義がもたらしたダメージの修復に力を入れるだろう。防衛費の分担を求める理不尽な要求を引き下げ、気候変動やイランなどの問題での協力を強化し、環太平洋パートナーシップ(TPP)再検討への扉を開く可能性さえある。

「バイデン全副大統領とその関係者の公の場での発言はすべて、バイデン政権がアメリカにとって主要な国々との関係、特に日本との関係を修復し、再構築し、再確認することを最優先することを示唆している」と、元国務省東アジア担当のエヴァンズ・リヴィア氏(現在はブルッキングス研究所所属)は言う。

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