安倍氏「健康問題」アメリカはどう見ているのか トランプ、バイデンそれぞれの思惑は?

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「現政権は、トランプ氏の惨憺(さんたん)たる世論調査結果をなんとか乗り切ることばかりにとらわれており、ポンペオ国務長官なども共和党大会や内政で前代未聞の役割を果たしている」とジョージ・W・ブッシュ政権でアジア担当国家安全保障補佐官を務めていたマイケル・グリーン氏は語る。

「中国叩きは現政権が生き延びるための戦略の1つだが、トランプ政権はこれを、同盟国を重視するという姿勢にまで持っていくことはしていない。従って、現時点で政権上層部が安倍首相の運命や、ポスト安倍の動向にそれほど関心を持っているとは私には思えない」

同盟を支えるうえで「これ以上ない人物」

一方、政権の準トップ層では、日本政府に何が起きているのかという意識が非常に高まっており、懸念すら抱かれている。「日米関係を担当するアメリカの政策決定当局者たちは、この成り行きを非常に注視しており、アメリカ大使館や日本国内の政治その他の動向の報告責務を負う他の機関などと綿密な連絡をとっている」と過去に東アジア・太平洋担当主席国務次官補代理を務めたこともあるエバンズ・リヴィア氏は言う。

スティーブン・ビーガン国務副長官や、マシュー・ポッティンガー国家安全保障補佐官代理といった次官級レベルの高官たちは「懸念を持って注視している。安倍首相は彼らにとって、『自由で開かれたインド・太平洋』戦略の礎(であり、さまざまな意味で計画立案者)となってきたからだ」とグリーン氏は認める。

とくに中国との全面対立への道に深く突き進むトランプ政権にあっては、安倍首相は彼らの目標に忠実であることから非常に貴重な位置を占めている。

「長らくこんな見方がされてきた」と、かつてトランプ政権で安全保障関係担当の高官を務めたある人物は話す。「中国に関して正しい見識を持つ安倍首相は、同盟を支えるという意味で『これ以上望めないほど適切な人物』であると」。

しかし、安倍政権の弱体化は、すでに一部のアメリカ政府関係者に目に見える影響を与えている。日米関係の根本的な基盤に対しての不安はないが、「安倍首相の任期が終わる頃には、すでに実行が難しくなっているのではないかという諦めの声が広がっている」と、ジョージタウン大学と戦略国際問題研究所(CSIS)で日本部長を務めるグリーン氏は指摘する。

最近ではイージス・アショアのレーザー・ミサイルシステム配備計画の停止が、アメリカの政策決定機関にとってポスト安倍政権時代の安全保障協力の減速の可能性を示唆する一例となった。

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