「面白半分」では済まない鉄道妨害の大きな代償 単なる「いたずら」のつもりでも重大事案に発展

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行先表示や種別表示にプラ板もしくはホーロー版でできたサボが多く使われていた時代には、これらの物がよく盗まれた。ほかにもヘッドマークや機関車の銘板、駅名標、駅備え付けの時刻表など、「盗り鉄」の犠牲となったものは枚挙にいとまがない。

これらの行為は明らかに窃盗罪(刑法第235条・10年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当する。また、誰にも邪魔されずに盗みを働いた後に発見されて、捕まるのを防ぐために殴るなどした場合には、窃盗罪にとどまらず事後強盗罪となって強盗罪と同じ罪になる(刑法第238条・5年以上の有期懲役)。

ましてそこで相手をケガさせれば事後強盗致傷罪となり強盗致傷罪と同じになる。強盗致傷罪の場合、法定刑が無期懲役または6年以上の懲役になり(刑法第240条)、法律的には執行猶予を付することは可能であるが、実刑になるのがむしろ普通である。

万一、殴りどころが悪くて死なせてしまえば、強盗致死罪(刑法第240条)となり、死刑または無期懲役となる。刑の減軽は可能であるが(とはいえ酌量の余地はあまりないと思うが)、どう逆立ちしても法律的には執行猶予が付くことはない。

設備を勝手に動かすと…

たまに、信号保安設備を勝手に操作したりむやみに作動させたりするということが起きる。冒頭で触れた特殊信号発光機をむやみに作動させるというのもその一例である。標識や信号機を物理的に壊したり機能を妨害すれば器物損壊罪や鉄道営業法違反(同法第36条第1項第2項・2万円以下の罰金または科料、信号機毀損等の場合には3年以下の懲役)になるし、むやみに作動させたり誤作動を起こさせたりして列車運行の妨害をすれば、偽計業務妨害罪になる。

勝手にいじるというのとは異なるが、少し前に中央線や山手線の信号ケーブルを焼いた者がいた。器物損壊罪、威力業務妨害罪に問われ(ほかに火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反も)、懲役4年の判決を受けている(東京地方裁判所2016年3月25日判決)。

ケーブルでなく、信号などの標識を損壊して列車の運行に危険が生じれば、これらの罪のほかに往来危険罪にも該当することになり、罪が重なっていくことになる。

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