静岡リニア問題、県民視点で見た問題の本質 知事のメッセージは最初からJR東海に明示済み
6月26日、金子社長は、初めて県庁を訪れ、川勝知事に面会した。トンネル本体工事に向けて、準備工事再開を要望。7月10日には、国土交通省の藤田耕三事務次官も準備工事再開を要請したが、川勝知事は地元の理解が得られないとして、県条例の運用、解釈拡大によって、準備工事再開を認めなかった。
金子社長は会見で「静岡県が着工を認めてもらえないので、2027年の開業は難しい」(発言ママ)と述べた。これを受けて、メディアは、リニア開業が遅れるのは「静岡問題」が原因と伝えるようになった。
正確に言えば、準備工事はヤード(宿舎を含めた作業基地)建設のみであり、その後の輸送用トンネル、導水路トンネル、先進坑、トンネル本体工事などであらためて、河川法による県知事の許可が必要となる。そのハードルは準備工事に比べて極めて高い。金子社長は準備工事さえ認めてもらえれば、トンネル本体工事もなし崩しに着工できるのではと内心、期待していたのかもしれない。
静岡県の本音は「地域貢献」だ
県は今月13日、国交省鉄道局長宛に有識者会議の議論について疑問点を意見書にして送った。4回にわたる有識者会議の議論は、JR東海の説明を基に進められ、中下流域の地下水への影響はほとんどないという結論でまとまる方向で進んでいた。ところが、県の意見書はデータの根幹となるJR東海の「水収支解析」を厳しく批判した。これで有識者会議の議論は振り出しに戻るかもしれない。
川勝知事は、有識者会議の結論は尊重するが、地元の理解が得られなければ、リニア工事の着工は認められないという姿勢を明確にしている。有識者会議は骨抜きにされ、その存在自体が意味を失う可能性もある。リニア工事着工を認めるかどうかは、流域市町の利水者から一任される川勝知事の決断にすべてかかっている。
JR東海は、川勝知事が3年前に発した、「静岡県にメリットがない」という“シグナル”を無視したまま、「静岡問題」に取り組んでいる。1979年に沿線9都府県がリニア中央新幹線建設促進期成同盟会を設置したのは、各地域の発展を願ってのことであり、川勝知事も昨年6月、まったく同じ思いで、期成同盟会への入会を申し込んだ。川勝知事は「まず、JR東海は誠意を示すことが大事」とはっきりと述べている。
川勝知事はリニアに賛成と言いながら、リニア工事を認めない理由を次から次へと挙げてくる。もはや遅きに失した感もあるが、JR東海が「静岡問題」を解決したいならば、「地域貢献」について考えたほうがよさそうである。
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