官邸発「ワーケーション」は働き方を変えるのか SNS上であがる反発の声、課題は時間の自由度

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――海外のワーケーションはどんな状況なのでしょう。

ワーケーションは欧米で盛んとされているが、実際には世界的にも普及が進んでいない。日本では、東京オリンピック開催が1年後に迫った2019年夏ごろ、五輪期間における首都圏人口の分散策として行政から発信されるようになった。

コロナ前のワーケーション推進で目立った動きとしては、複数の自治体が情報発信などを目的とした自治体連合「ワーケーション・アライアンス・ジャパン」を2019年11月に設立したことだった。つまり、早期からワーケーションに期待してきたのは、(労働者や企業ではなく)行政や地方だった。

総務省にはもともと、定住者でも観光客でもない「関係人口」を地方で増やすという大きなミッションがあった。それに向けて、ワーケーションの推進という発想が生まれた。また、地方の人々も空き家や空きオフィスの問題解決への期待を抱いていた。

ワーケーションが普及すれば、今まで以上に(地方の観光地に)長期滞在しやすくなる。宿泊施設にとっては、客室を埋めることが難しかった平日やオフシーズンの稼働率向上につながる。買い物など、観光以外の事業者にも恩恵がある。

東京五輪でワーケーションは普及する

――政府のワーケーション推進策は、まさにそのような効果を期待しています。ワーケーションは、東京除外を強いられた「Go To トラベル事業」を補う観光振興策となりうるのでしょうか。

これからWi-Fiなど必要な設備を整備しつつ、コロナ対策を徹底したうえで、滞在プログラムを組成しなくてはならない。今年はもともと夏休みが短かったため、(じきに)夏の観光シーズンも終わってしまう。(ビジネスパーソンが多く)ワーケーション利用者の最大マーケットと考えられる東京都においてコロナ感染が収束していない点を踏まえると、今年からワーケーションが一般的になるとは考えにくい。

今年は労働者の間でワーケーションが徐々に定着し、企業が労務上の仕組みを構築するフェーズと言えるだろう。2021年に東京オリンピックが開催され、東京からの人口分散が求められる時期に、ワーケーションが一般的になる可能性は十分ある。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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