私事だが、結婚して9年目の夏を迎えている。筆者は35歳のときに再婚したので、本連載が定義する「晩婚さん」の1人だ。
前回の失敗(離婚)を生かしたつもりなので、結婚相手との相性にはあまり不安はなかった。しかし、東京の西荻窪という好きな街での一人暮らしをやめることには大いに抵抗があった。妻は愛知県で家業の工場を継いでいるので、一緒に暮らすためには筆者が愛知県に行くしかない。大げさに言えば、アイデンティーの一部を失うような気持ちになった。
今では、失ったものよりも得たもののほうが多かったと感じている。結婚後に暮らし始めた愛知県の三河地方で少しずつ出会いがあったからだ。
出版業界のフリーランサーがやたらに多かった西荻窪とは違い、三河地方で知り合うのはさまざまな職種の人たちだ。特徴といえば自動車関連の会社員が多いぐらいだが、車の運転が苦手な筆者との接点はない。
自分から積極的に仲良くなりにいくしかないと筆者は覚悟した。近所の喫茶店で常連仲間を作ったり、妻の同級生や取引先と食事したり、同じマンションの住民に声をかけて自宅で忘年会をしたり。
8年後の今、東京で気の合う同業者とだけ付き合っていた頃よりも、交流の幅が広がっている。独身時代の人間関係もすべてが切れたわけではない。妻との晩酌時間を含めて、人生はむしろ豊かになったと感じている。
理想の恋愛対象とは程遠い結婚相手とは
神奈川県の実家近くで6年目の結婚生活を送っている小池晴子さん(仮名、42歳)は、つねに寄り添ってくれる夫の慎也さん(仮名、46歳)との間に生後8カ月の息子がいる。「今までの人生でいちばん幸せで満たされた気持ち」だと語ってくれた。
「楽しい!という気持ちは独身時代のほうがあった気がします。自分で稼いだお金を自由に使えて、好きな海外旅行にも行けました。子どもが小さい今はやることがいっぱいあって、自分の時間はほとんど持てません。でも、子どもの寝顔や笑顔が最高にかわいいなと思います。夫は子育てのパートナーです。でも1番の興味ではなくなりました(笑)」
子どもをより強く欲しがったのは慎也さんなので彼としても不満はないだろう。風呂場や換気扇の掃除など、得意な家事を率先してやっているらしい。ただし、晴子さんがかつて男性に求めていた「ちょっと強引に引っ張ってくれる」人物ではない。2人はどこでどのようにして出会い、現在に至るのだろうか。まずは「割とプラプラと生きて」いたという晴子さんの20代から振り返ってもらった。
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