タイ生まれの「カローラクロス」はどんな車か 国内発売未定なのに日本で発表した理由とは

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それにしても、RAV4に続いてカローラクロスが新しく生まれ、また「ヴィッツ」から車名変更した「ヤリス」にもSUVの「ヤリスクロス」が加わり、近年のトヨタのSUV攻勢には驚かされるばかりだ。先ごろフルモデルチェンジされた「ハリアー」も大ヒットしている。「ランドクルーザープラド」もマイナーチェンジで商品力を高めてきた。

RAV4は、一時期日本国内での販売が中止され、忘れられたかのような存在になっていたが、日本自動車販売協会連合会(自販連)の乗用車ブランド通称名別順位における今年1~6月の集計では、2万7215台を販売し、15位につけている。C-HRも堅調で、1万8389台で19位だ。

ちなみに、ダイハツとの共同開発による「ライズ」は、5万8492台で1位。これで、カローラクロスが日本でも発売されたら、トヨタのSUVの強さが際立つようになるだろう。これだけ多種多様なSUVをラインナップすることは、ほかのメーカーには不可能だ。「トヨタに行けば理想的なサイズのSUVが見つかる」となれば、より多くのユーザーを取り込めるだろう。

商品力アップの要は「TNGA」にあり

車種構成の隙間を埋めていく商品企画の見事さもさることながら、そこで効果を発揮しているのは、やはりTNGAという設計思想であろう。

TNGAは、クルマの基礎となる部分は技術を共通化し、そこで開発原価を調整しながら、商品ごとの特徴を最大限に引き出せるよう、残りの資源を投入する新車開発の方法だ。

従来は、プラットフォームやパワートレインなど、個別の技術要素は共通化されてきたが、TNGAでは部品の集合体である1台のクルマとしての基本性能の完成度を高め、そこを共通化し、車種ごとの商品の独自性を伸ばす開発の仕方に昇華させたのである。

TNGAによるクルマ作りは2015年発表の4代目「プリウス」から始まった(写真:トヨタ自動車)

TNGAを用いた新車に試乗すると、クルマとしての基本性能が磨かれていると同時に、商品性の面でも全方位的に魅力が高まっていることが実感できる。また、価格との対比においても質感や性能は高く、商品として満足度の高いものに仕上がっている。かつての部品流用による原価低減とはまったく異なる、効率化と商品力の向上の両立がTNGAによってもたらされているのだ。

もちろん、今日では世界の自動車メーカーが、TNGAと同様の発想での新車開発や技術開発を進めているが、トヨタが得意としてきた消費者動向の把握や、それを支える販売店との密接な関係が、TNGA効果をさらに高めていると思うのだ。それがまさしく、カローラクロスで体現されていると感じる。

唯一の懸念は、ハイブリッドでの電動化ではなく、電気自動車(EV)へ向けたより積極的な電動化において、トヨタが遅れていることだ。EVの具体的な導入計画がないことで、販売店は「トヨタ離れが起きるかもしれない」という不安を抱きはじめているとも聞く。新型コロナウイルスの影響下においても黒字を守り続けられるトヨタが、SUV攻勢で手に入れた資金を基に、EVを一刻も早く商品化し、日本へも導入することを期待する。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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