ヨシタケシンスケがラーメン屋で気づいた真理 本当に食べたいものは「底」にあるんじゃない?

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「サァ!今日も元気に顔色をうかがっていこっ!」

「サァ!今日も元気に顔色をうかがっていこっ!」

「おおー!」

って。これは、みんなで、朝1発目に気合いを入れるためのかけ声です。

もうこれ以上でもこれ以下でもない。社会人がやってることって、ほぼこれだけじゃないかとも思います。

肯定係

感謝係の次は、肯定係。そのままでいいのよ。大丈夫よ。しなくていいのよ。って、言ってくれる。あなたはいいのよ、そのままで、って。よく考えてみると、必要だったじゃないですか、やってよかったじゃないですか、それ、糧になってますよ、とか。

肯定係の方々はプロなので、「不要な肯定はしない」「甘やかしすぎない」ってのがポイントですね。すぐにでも来てほしいです。

人は日々、「雪かき」をしている

必要なところだけじゃまなものをどける

大雪が降ったとき、みんなが使うところだけ、雪をどけるわけですね。そうすると、街で普段使ってるところだけが可視化される。っていうことは、この今、白い雪の残っている道のところは、実は普段なくてもいいのがわかる。

関東は、めったに雪が降りません。だからたまに積もると、急に社会が見える。若い家族の家の前は、早くから雪がどけられている。夕方まで雪が残ったままなのは、雪かきしたいけどできない家。1人暮らしのおじいちゃん、おばあちゃんの家なんだっていうのも、わかる。雪がいろんなものを可視化させる。

反対側のお隣がいい人で、うちの雪かきもやっちゃうぐらいのパワーがあるとか、生き物としての強さもそういうときに出る。だから、雪の日は怖いんです。いろんなものが噴出するんで。

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必要なところだけじゃまなものをどける、って。面白くないですか。世の中、みんな無意識にじゃまなものをどけながら生きてるわけです。それも最小限。たくさんどけるのは、大変だから。少ない労力で必要なところだけ、やる。でも、その人その人で、家々で最小限のエリアが違うわけですよ。車があれば、もっとどかさなきゃなんないとか。

人生においても、その人その人のじゃまなもの、雪に代わる何かそういうものがあるはずで、みんなやっぱり雪かき的なことを毎日やりながら生きてるんだろうなあって、思ったんです。

あの人は、何をどけて生きているのか。

普段何気なくどかしてるけど、どけたことを本人はわかってないかもしれない。

それを、雪みたいに見えるようにできないだろうか、って。

ヨシタケ シンスケ 絵本作家

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Shinsuke Yoshitake

1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に『しかもフタが無い』、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』、『そのうちプラン』など多数。2児の父。

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