ユーロ相場、8日のECB追加緩和に注目 敏腕アナリストが分析する為替相場

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ECB追加緩和の条件とは?

ECBがユーロ高や低インフレに対する懸念を強めるなか、ユーロ相場を見るうえでは、ECBの追加緩和の可能性が焦点となろう。今後のECBの金融政策について、ドラギ総裁は4月24日の講演で追加緩和が必要となる3つの状況を挙げている。

第1は、正当化されない政策スタンスの引き締まりだ。これについては、短期金融市場における緊張の高まり、グローバルな債券市場からの影響、そしてユーロの続伸を指摘した。こうした状況が生じた場合の対策としては、利下げ(マイナスの預金ファシリティ金利も含む)、固定金利無制限供給オペの延長、新規の流動性供給オペといった、伝統的な措置が適切だとの見方を示した。

第2は、銀行貸出の回復の遅れといった政策スタンスの波及経路の障害を挙げた。ドラギ総裁はこれに対する処方箋として、対象を絞った長期リファイナンスオペやABS買取りプログラムを列挙した。

第3は、広範な総需要の悪化などによる中期インフレ期待の悪化を挙げた。ここでは金融緩和度合いを強めるため、広範な資産買取りプログラムが有用だと指摘している。

ユーロ安予想だが、仏などの構造改革にも注目

5月8日のECB理事会では、金融政策の据え置きが市場コンセンサスとなっているが、上述のように、インフレ率が低水準に留まっていることから、追加緩和の可能性も高まってきている。

もし、追加緩和が決定された場合、ユーロ安圧力が強まろう。バークレイズはECBが年内に追加緩和に踏み切るなかで、ユーロ/ドルが年末までに1ユーロ=1.28ドル、ユーロ/円は1ユーロ=135円までそれぞれ下落すると予想している。リスク要因としては、構造調整の遅れているフランスやイタリアで今後改革が進展した場合、賃金調整を通じたディスインフレ圧力の強まり(結果、実質金利が上昇)や内需落ち込みなどを受けた経常黒字の拡大で、ユーロが下げ渋る可能性がある点に注意したい。

門田 真一郎 バークレイズ銀行東京支店 為替ストラテジスト

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かどた しんいちろう

 

米UCLA経済学部卒。2008年バークレイズ証券株式会社に入社。調査部にて銀行戦略調査を担当した後、 2009年に外債ストラテジー・チームに異動し、米国を中心にカナダ・メキシコを含む北米地域の経済・市場動向の調査を担当。 2013年にバークレイズ銀行に異動し、為替ストラテジストに就任。海外拠点の為替・金利・経済チームとのネットワークを活かし、為替市場見通しのほか海外経済・政治動向などについて幅広い情報提供を行っている。

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