レバノン流血の取材記録、あまりに壮絶な現場 世紀の巨大爆発の傍で彼らは世界へと配信した

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フランシスは携帯を取り出し、社内用語で「スナップ」と呼ばれる速報を送るよう同僚らに連絡しようとした。

「『大規模爆発』と『スナップをお願い』とメッセージを送ろうとしたが、なかなかうまく打てなかった。手がひどく震えていたから」と、フランシスは語る。

「大丈夫か」と叫んだ支局長のトム・ペリーもまた、同僚らに爆発を伝え、妻と息子に連絡を取ろうとしていた。「今すぐここを出ないとダメだ」

外に出た2人は、顔から流血している女性が両腕を広げて近寄ってくるのに気づいた。オフィスに戻ろうとしていたアビ・ネーダーだ。

傷んだ壁とがれきの残る部屋で

「オフィスは無くなった」とフランシスは告げた。3人はペリー支局長の自宅に向かい、傷んだ壁とがれきの残る部屋で夜通し職務に当たった。

中東担当のエディター、サミア・ナコールは、これまでにレバノン内戦、イラク侵攻、アラブの春を取材した。イラク侵攻の現場では重傷を負った。

今回の爆発の瞬間、ナコールは10代の子ども2人とともに車に乗っていた。

何年もの戦争取材を経験したナコールは、とっさに子どもたちに伏せるように言い、その後は車から降りて身を守れる場所を探した。

「子どもたちの目に浮かぶ恐怖とトラウマ、そして子どもたちに何かあったらと考えたときに自分の全身をかけめぐった不安を、死ぬまで忘れられないだろう」と、ナコールは言う。「今回の悲劇は、私がこれまでずっと忘れようとしていた記憶を呼び覚ましてしまった」

3人は走って自宅に戻った。そして、ナコールはノートパソコンの電源を入れた。

(Alessandra Galloni)

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