子どもを追い詰める「間違った」期待のかけ方 期待という言葉の捉え方が間違っている

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期待するというのは、じつは大変に勇気がいることだと思っています。なぜなら、「期して待つ」ということは、何もアクションをしないということだし、ただひたすら「相手を信じる」という忍耐力が必要になるからです。

もしかするとそのとき、一見して何の変化もなく、「これからも何も生まれないのでは……」という恐怖すら覚えるかもしれません。目まぐるしく変わっていく、この変化の速い時代にあって、本当にうまくいくかどうかわからない、何も起こらないかもしれないことを、ただ待って、そこに投資するのです。本来の「期待」というのは、勇気の象徴だと言えるのではないでしょうか。

そうなると、「期待しなければいいのでは?」という意見も出てきそうですが、期待をかけないのもダメ。ですから、親は正しい期待のかけ方について知る必要があるし、勇気も必要です。では、それはどういうふうに練習をしたらよいのでしょうか。

日常生活の中で「忍耐」を学ぶ

日常生活でのちょっとした沈黙にも耐えられない人がいたら、その沈黙に耐える、あるいは「沈黙でもいいんだ」という意識に変えることが1つのトレーニングになります。

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SNSで言えば、「既読」になったあとに返事が待てない人は、「それでも別にいいんだ」という意識に変えること。ちなみに、SNSでの返事については、中高生の間でそれがいじめの要因にもなっていることを思うと、現代人の「待つことの難しさ」を表しているように感じます。

人が何かを生み出すときというのは、誰かが何かをじっと見守り、待つことで起きるのではないかと思っています。その空間を社会全体で作れるようになるといいですね。

そのためには、お互いが「自分らしく」あろうとすることが重要だと思います。お互いへのリスペクトがあれば、「期待していたのに!」と勝手に期待して怒ることもなくなるでしょう。「まだ子どもだから」と親は考えがちですが、幼いといえども「一個の人格」としてきちんと捉えることが大切なのだと思います。

中竹 竜二 株式会社チームボックス代表、日本ラグビーフットボール協会理事

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なかたけりゅうじ / Ryuji Nakatake

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行うチームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立。

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