韓国フェリー沈没事故、不祥事続き政権危機 セウォル号沈没事故が国を揺るがす事態に

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476人が乗っていたセウォル号の沈没事故は、韓国を揺さぶっている

死者・行方不明者が300人──。4月16日、韓国南西部・珍島(チンド)沖合で凄惨なフェリー沈没事故が発生した。修学旅行の高校生が多数含まれていた。必死の船内捜索も、潮の流れが速く、進まない中、捜索当局への批判、さらには朴槿恵(パククネ)政権への批判が強まった。

今回の事故は、船長が乗客より先に避難したこと、操縦を3等航海士に任せたことなどフェリー運航会社の責任が大きい。船長をはじめ多くの操船乗員が逮捕されている。

また、救助に関する公表情報が二転三転する事故対策本部や海洋警察庁など救難体制の不十分さも露呈。災害対策を所管する安全行政省の高官が対策本部を訪れて記念撮影をするという行為が発覚してクビになるなど、公務員の不祥事も続発している。

韓国では大惨事が起きるたびに、引責を問われるほど、時の政権が激しい批判にさらされる。「大統領がだらしないから天下が治まらない」という考え方からだ。

発生の責任が特段、政府になくても、その収拾には官民挙げてドタバタ劇が繰り返され、そのたびに政権は危機に陥る。たとえば、1993年に同様のフェリー事故で292人が死亡して強い批判を受けた金泳三(キムヨンサム)大統領の場合、その後も、94年のソウル・漢江(ハンガン)の橋崩落で32人、さらに95年のソウルのデパート崩落事故で502人の死者を出して、「安全不感症患者」と烙印を押され、国民からは総スカンを食らっている。

しかし、今のところ、朴大統領は、それほど強烈な反発を受けているわけではない。事故翌日には現場を訪れ、厳しい声を投げ付ける被害者家族一人ひとりの手を取りながら声をかけ、丁寧に対応した。その一方、公衆の面前で現地責任者を厳しくしかった。こうした姿勢が、好感を持って受け止められている。

だが、大統領を支える内閣や与党セヌリ党幹部の表情は暗鬱だ。6月に統一地方選挙を控え、ダメージは免れえないからだ。ダメージを最小限に抑えるため、「内閣総辞職か主要閣僚更迭は必至」(与党関係者)だろう。いわば、大統領によるトカゲのしっぽ切り。今後、犠牲者が増え続けるにつれ、大統領の危機管理能力が問われ、さらなる責任問題に発展しかねない。

(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2014年5月3日-10日合併号)<4月28日発売>のニュース最前線より *記事内容は4月下旬時点のもので、その後、大きく変化しています)

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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