凄すぎる「台湾のベビーシッター」日本との大差 「安心安全」はこうやって作られていた

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加えて、「在宅保育サービスセンター」への登録を済ませる必要があり、登録のために必要な書類は下記の通り。登録有効期間は六年間で、更新が必要となる。

・3カ月以内の健康検査合格証明(原本)
・シッター技術資格証明書、高校以上の幼児教育・看護・家政関連学科卒業証書、保育士専門訓練の卒業証書のいずれか(コピー)
・3カ月以内の刑事記録証明(原本)
・預かり環境の安全チェック表(原本)
・共同居住者名簿
・登録申請書および警察刑事記録同意書(原本)
・身分証明書(コピー)
・身分証明写真

この「刑事記録証明」は日本ではあまりなじみがないが、台湾で「良民証」と呼ばれ、採用時など一般的によく使われる証明書で、特定の警察署で最速2時間で発行できる。

彭婉如文教基金會」が運営する、台北市の中山エリアの在宅保育センター。ここでベビーシッターの登録が行われる(写真:筆者撮影)

ネット申請も可能だ。刑事記録にはわいせつ罪なども含まれており、過去にこのような犯罪歴を有する者はこの段階で排除できる。さらに、同法第5条では、ベビーシッターによる虐待や放置といった行為ははっきりと明文化されて禁止されている。

また台湾では男性のベビーシッターも少なくないが、そのほとんどが前述で紹介したように夫婦でシッターをしているというケースだそうだ。黃さんは「それでも特に男性が就くことのできない職業というわけではありません。医者と同じです」と補足した。

2歳以下の子を持つ8割の保護者が自宅で育児する

ただ、台湾にはまだまだ課題が大いにあると黃さんは教えてくれた。

「2002年に「性別工作平等法(男女機会均等法に相当)」が制定されて以来、少しずつ状況は改善されているものの、現状の台湾は妊婦や子育て中の女性にとって決して優しい環境ではありません。

現在でも0歳〜2歳の子どもがいる保護者の約8割が、自宅で自分で子どもの世話をしている状況です。女性もたくさんの能力や才能を持っているのに、それだけの人々が家庭で育児しているというのは大変残念なことです。人、企業、社会、そして台湾にとってまったくプラスになりません。この状況を変えていくことこそが私たちの使命です」(黃さん)

プロフェッショナルな仕事として誇りを持って働くベビーシッターや、それを陰で支える運営機関があるおかげで、筆者はこうして今日も取材へ行き、原稿を書くことができている。そうして実行された仕事が、次の誰かの役に立っていく。

きちんと確立しさえすれば、ベビーシッター制度が社会をよくすることができる。台湾がそれを実証している。

近藤 弥生子 ノンフィクションライター

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こんどう やえこ / Yaeko Kondo

2011年より台湾・台北在住。オードリー・タンからカルチャー界隈まで、生活者目線で取材し続ける。東京の出版社で雑誌編集を経たのち、駐在員との結婚をきっかけに台湾移住。現地デジタルマーケティング企業で勤務後、独立して日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を設立。台湾での妊娠出産、離婚・シングルマザーを経て、台湾人と再婚。著書に『オードリー・タンの思考』『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』がある。

ブログ:「心跳台灣」

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