慰安婦、徴用工が語る「日韓歴史問題」への本音 日韓は永遠に分かり合えない、は誤解だ

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──日韓間の問題だけでなく、韓国自身の問題も取り上げています。

戦争で問題を起こすのは日本だけではありません。韓国は朝鮮戦争の舞台となり、多くの民が苦しんだ歴史があります。ベトナム戦争にも参戦し、地元住民の虐殺事件を起こしました。また、在韓米軍のために送られた「米軍慰安婦」も存在しました。

韓国の内外で生じたこのような問題を考えると、韓国でいう歴史認識には2つの構造があるようです。1つは植民地支配を行った日本に対する「自分たちは帝国主義や戦争の被害者だ」という意識です。もう1つは、そういった被害者意識が強くある一方で、自分たちが参加した戦争での行為に関する反省には無関心である点。韓国の政治家や知識層には、日本への対抗心が過ぎるあまり、日本たたきは率先して行うのに自国の行為については反省しないという姿勢が見受けられます。

当事者が願うのは平和、日韓はわかり合える

──政治家や市民団体の言動、それを報道するメディアは問題をあおるばかりで、当事者本位の解決を妨げていることも指摘されています。徴用工の発言が、韓国メディアの取材で一転したという例もありますね。

『韓国人、韓国人を叱る 日韓歴史問題の証言者たち』(書影をクリックするとアマゾンのサイトへジャンプします)

確かにあります。とはいえ韓国の大手紙記者から、「われわれは反日というスタンスから、日本に批判的なことしか書けない。だから、頑張ってほしい」と言われたことがあります。韓国にも事実を伝えようとする記者は当然いますが、政治や市民運動家の声が大きすぎてなかなか筆を進めることができないようです。日本メディアも、これまでの報道は政治中心の視点での報道ばかりで、当事者目線の報道には関心が弱かったといえるでしょう。

──韓国国内の慰安婦は現在17人。徴用工も同様に高齢化が進み、亡くなる人が増えて、証言も取りづらくなっています。

そのとおりです。われわれの言う「歴史問題」が、徐々に歴史そのものへと変容しつつあります。

韓国人の中にも「私たちの願いは平和、もう戦争をしないこと」と言う戦争経験者がいます。憎しみや悲しみの経験を経てもなお、過去のことでいさかいを続けていてはいけないというメッセージを取材で感じることがしばしばありました。そのメッセージに寄り添えば、日本人と韓国人はわかり合える。日韓は永遠にわかり合えない、というのは誤解だと思うのです。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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