「巨大トンネル建設」を撮った写真家が見たもの トンネル作りの作業は「掘る」だけではない

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福島県川俣町・国道114号の泡吹地トンネルが完成するまで数十回通って撮影したいという山崎氏(撮影:大澤 誠)
トンネル貫通後、全面防水シートに覆われた黄金色のがらんどう。まばゆく反射するライトの光、静謐(せいひつ)さをたたえた巨大空間の神々しさに息をのむ。福島県川俣町・国道114号の泡吹地(あわふくじ)トンネル(203m)が完成するまでの1年半を記録した写真集『トンネル誕生』。撮影した写真家の山崎エリナ氏に話を聞いた。

新たなトンネルが開通する光と陰

──起承転結を地で行くように、物語は静かにスタートします。

ここからトンネルを掘っていく、と地図の施工起点を指さす写真を最初の1枚にしました。実はそれ以前に、事務所開きや電話線を引くところも撮っていました。後から地図を指さす光景に出くわしたとき、自分的にもここから完成まで立ち会うんだ、という気持ちが高まって即決しました。

──そして2枚目。さあ巨大重機登場、かと思いきや、あぜ道をとぼとぼ歩く作業着2人の後ろ姿。

もうここからは本当に時系列で見せようと。工事開始は冬。雪を踏みしめポケットに手を突っ込んで、起工する山肌を見に行くところです。新しいトンネルが開通するという光の部分と同時に、横にたたずむ田んぼの風景は消滅するんだなという陰の部分が浮かんだ。その山あいの景色に対するいとおしさというか、撮り残したくないという思いがありました。

──本格的に工事が動き出すにつれ、登場する風景の色彩がコントラスト鮮やかになっていきます。

巨大なトンネルの坑門に向かって、白い装束をまとった神主さんと白っぽい作業着の工事関係者たちによる安全祈願が行われます。貫通までは、固い地盤に多数の孔をあけて火薬を仕込み、爆破させながら掘り進めていくのですが、赤い塗装を施された掘削機のドリルジャンボなど重機も、神主さんによって全部お祓(はら)いされます。

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