安倍首相、「1カ月半ぶり会見」で狙う反転攻勢 G7、党・内閣人事前に8月原爆忌で記者会見へ

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その一方で、8月6日と9日に想定される首相会見は、従来通りの質問時間制限は可能だが、感染再拡大が続いていれば安倍首相の政治責任を問いただす質問が予想され、「首相にとっても重要な会見」(政府筋)となる可能性が大きい。

8月のお盆前後には公選法違反で起訴された河井克行前法相、夫人の案里参院議員の東京地裁での公判も予定されている。河井夫妻は議員辞職せずに法廷闘争を続ける構えで、検察側が自民党本部からの1億5000万円の使途も含めた捜査結果を明らかにすれば、改めて安倍首相や二階俊博幹事長らへの批判が強まりそうだ。

G7サミットで狙う政権浮揚

今後の政治日程をみると、8月末に予定されるG7サミットへの出席が安倍首相にとって久しぶりの晴れ舞台となる。安倍外交をアピールできれば、政権浮揚の材料となるが、感染再拡大で日本が混乱していれば、自ずと存在感は薄れる。

また、その後に想定される党・内閣人事も難題だ。現状では「国難突破のための挙党一致内閣」を狙うのが常道とみられているが、麻生太郎副総理兼財務相や二階、菅両氏ら政権の3本柱を続投させるようであれば、期待外れになりかねない。

安倍首相が「政権最大のレガシー」と切望する来夏の東京五輪開催も、日本の早期感染収束が困難となれば、秋口から再延期や中止論が勢いを増しそうだ。併せて、麻生氏が唱える今秋解散・総選挙も見送らざるをえず、反転攻勢の材料も失う。

安倍首相は7月25、26日を自宅で完全休養した。「山梨県の別荘に行って、ゴルフを楽しむ予定だった」(政府筋)とされるが、感染再拡大で断念せざるをえなかったとみられている。例年、お盆前後に大型夏休みをとり、それに合わせて地元山口へお国入りしていたが、コロナ対応を理由に見送る方向だ。

ここにきて各種世論調査での内閣支持率は3割強に踏みとどまっているが、後継者不足や多弱野党による消極的支持が目立っており、「いったんたがが外れれば、支持率は一気に2割台の政権危機レベルに落ち込む」(調査専門家)とのリスクもはらむ。

安倍首相にとってまずは8月をどう乗り切るかが最大の課題だ。SNS上で「♯さよなら安倍総理」がトレンド入りしたように、コロナへの不安で国民の心も荒み、それが政権批判と安倍離れにつながる兆しもある。8月上旬に想定される久しぶりの記者会見で、自らの言葉で国民の心をつかめるのかが安倍首相による「魔の8月」克服のカギとなりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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