死亡者数が少ない「日本のコロナ対策」のスゴさ なぜ世界一の高齢化社会が大感染防げたのか
アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大が続き、日本でもまた感染が拡大しているのではないかと言われている。第1波に各国がどう対処したかを比較するのは、次の感染の波に備える意味でも重要である。
日本を含む東アジアにおけるコロナ死亡者数は、欧米と比べると格段に少ない。台湾や韓国では、総統や大統領が陣頭指揮を執り、検査数を素早く増やし、ハイテクを駆使して、欧米のような経済的損失が甚大なロックダウン(都市封鎖)なしで第1波を切り抜けた。ところが、日本ではオリンピックへの配慮からか政治的な初期対応は随分と遅れたにもかかわらず、やはり死亡者数が非常に少ない。
国内では「日本モデル」が話題になっているが、国際的にはあまり興味を持たれていない。理由は3つ。1つは政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーも対外的に説得性がある説明をするに至っていないこと。2つ目は、データの公表があまりにも遅く、コロナ関係の国際的データベースには日本を除外しているものがあること。3つ目は、検査数の少なさが日本のデータの信憑性を低めていることだ。
専門家会議のメンバー自身が、日本の成功解明には社会科学者の知見も必要だと述べているが、筆者は、先進諸国の政策や制度の違いがどのように結果の差異をもたらすかを研究する比較政治学者として、まさに、医学・疫学の専門家とは違う視点から「日本モデル」を再考したい。
いち早くロックダウン
あまり言及されていないが、筆者は、日本の成功の大きなカギの1つは高齢者施設での感染拡大を抑制できたことだと考える。国際比較をすると、日本の介護関連行政と介護施設が非常に初期の段階で、コロナ対策を始めていたことが分かる。高齢者施設にいる人たちは慢性疾患があるなど、非常にリスクが高い。この集団をうまく守れるか否かはコロナ対策の根幹だ。
これには疫学者や官邸や都知事などスポットライトの当たる人たちの判断ではなく、行政と各施設で以前から積み重ねてきた地味なインフルエンザ感染予防対策などが大きく寄与している。だがそれ故に十分に評価されるに至っていない。この点を見過ごし、介護施設・事業関係者の尽力への評価と資源配分を怠ると、次の感染の波を無事に超えられない可能性がある。