「レクサスIS」7年目でも全面改良しない事情 セダン市場とGSの生産終了で変わるISの役割

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マイナーチェンジのため、プラットフォームをはじめとした基本部分は変わらず、ホイールベースも従来通りだ。一方で車体寸法は全長、全幅とも拡大され、外観は写真で見てもより抑揚のある造形となっている。

パワートレインは、直列4気筒の2.0リッターとV型6気筒の3.5リッターのガソリンエンジンと、直列4気筒2.5リッターのガソリンエンジンを使うハイブリッドの3種類だ。

ISが歴代注力してきた走行性能については、2019年に新設された愛知県豊田市下山地区のテストコース「Toyota Technical Center Shimoyama」で「俊敏な応答性や上質な乗り心地を磨いた」との説明があった。

この新しいテストコースは、ドイツのニュルブルクリンクでの経験を基に、自然の地形を生かした標高差75mの多彩なカーブで構成されているという。こうしたテストコースで高速走行を鍛えることは、クルマの潜在能力を高めるために有効だろう。

上質な乗り味と優れた走りは両立できたのか

しかし、上質な乗り心地は、一般道を走り込まなければ仕上がらない。マツダ「ロードスター」はライトウェイトスポーツカーだが、現行の4代目で各種テストコースを結ぶ敷地内の連絡路を時速30~40kmの低速で繰り返し走ることにより、操縦安定性と乗り心地を磨いていったという。

かつてF1の世界チャンピオンとなった英国のジャッキー・スチュワートは、その後フォード車の開発に携わったが、速度を上げて運転することはほとんどなく、ゆっくりと走り続けて評価をしていたと伝え聞く。

ISの開発に用いられた「Toyota Technical Center Shimoyama」(写真:トヨタ自動車)

実は、クルマの総合性能は、低い速度で走ってタイヤが路面変化に対応し、きちんと接地しているか、ちょっとした振動など乗り心地に違和感がないかを積み上げていくことが重要で、超高速での操縦安定性は開発の一部でしかない。どちらかといえば、その比重は低速側にある。

マイナーチェンジされたISにまだ試乗の機会はないが、ニュルブルクリンクを模したテストコースで仕上げるのではなく、それは通り道にすぎないとの考えで煮詰められているなら、競合他車と真っ向勝負できる上質な乗り味を優れた走りとともに期待できるだろう。

コンパクト4ドアセダンに求められるものは時代とともに変わっていくが、ISの素性は悪くない。今回のマイナーチェンジで円熟の魅力を引き出せているのであれば、ISの方向性として正しいのではないか。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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