GoToキャンペーン迷走で加速する官邸地盤低下 秋の解散説は消滅?東京五輪も開催困難に

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安倍政権が事業開始6日前という土壇場で東京除外を決めたのは、強行して全国的なコロナ感染拡大を招けば、首相の政治責任を追及されるとの恐れからだ。国民への一律10万円給付など、重要政策での方針転換を余儀なくされるケースが続いてきただけに、今回の迷走も安倍首相の求心力低下を一段と加速させるのは間違いない。

今回のGoToキャンペーン計画は、4月30日に国会で成立した第1次補正予算の中心政策だ。総事業費は約1兆7000億円と巨額で、事業者の選定の不透明さによる混乱などから、野党などから「強盗キャンペーン」「GoToトラブル」などと揶揄されてきた。

そうした中、政府は経済界や観光業界の強い要請を受けて、当初の8月上旬開始予定を7月22日に前倒しすることを決めた。東京では第2波ともみえる新規感染者が急増中で、与野党双方から見直し論が噴き出す一方、SNS上でも「#Go Toキャンペーンに反対します」とのツイッターデモが盛り上がっていた。

国の姿勢に小池知事は猛反発

その一方、安倍首相らは「全国一律での前倒し実施」に固執する姿勢を変えず、東京の感染急増についても菅義偉官房長官が11日に「圧倒的に東京問題」と発言するなど、官邸と小池百合子都知事とのあつれきが際立っていた。

7月の都知事選での圧勝以降、小池知事が感染拡大を放置しているようにみえることに対し、官邸の不満を吐露する発言とみられたが、小池氏は「逆に言えば、圧倒的に検査数が多いのが東京。これは国の問題だ」と猛反発。目前に迫るGoToトラベル事業についても「よ~く考えてほしい」と嫌味たっぷりの言い回しで再考を促した。

政府は16日にコロナ対策分科会を開いて「専門家の意見も踏まえて最終的に判断する」(西村経済再生相)としたが、その前提はなお「計画通り実施」だった。しかし、小池氏が同日、新規感染者数が280人台に達することを早々と発信。同日午後の参院予算委閉会中審査では、野党側が政府側に「なぜ今強行する必要があるのか」などと実施延期を強く要求した。

さらに、参考人として出席した東大の児玉龍彦名誉教授も「いま、国の総力を挙げて(感染を)止めないと、ミラノ、ニューヨークの二の舞いになる」と悲壮な表情で危機感を表明。東京都医師会の尾崎治夫会長も感染者が拡大している東京や大阪では「Not Go Toキャンペーン」を展開すべきだと訴えた。

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