ヤマハがステイホームで再認識した「音楽の力」 音楽教室の代わりにリモートレッスンを推進

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――電子ピアノの売り上げが好調です。音楽の需要は根強いということですか。

改めて音楽の力を再認識した。楽器や音楽は生活必需品ではない。不要不急といえば不要不急だが、逆に家にずっといるのであれば音楽を聴いて、弾いて楽しみたいという人が多かった。

なかた・たくや/1958年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、日本楽器製造(現ヤマハ)入社。商品開発部長などを経て、2010年より米国法人社長。2013年より現職(撮影:佐々木謙一)

これまでも「大人の音楽教室」など楽器人口を広げるための施策をやってきた。ただ、時間がなかったり、きっかけがない人も多かった。それがコロナによってテレワークが普及し、通勤時間などを音楽に充てたいという人が増えた。

――しかし、演奏技術を学ぶ場である音楽教室は休講しました。

音楽教室は休講した一方、リモートレッスンなど新たな形態も加速させられた。ヤマハは音楽教室があったため、リモート(レッスンの推進)を躊躇していた。ただ、コロナが起きて、リモートのよさをもっと生かしたレッスンの形態があると発想を変えて取り組んでいる。

合奏の楽しみ方も違ってくる。1つが「ネットデュエット」という技術だ。20年以上前から時間や空間を超えて演奏を一緒に楽しめないか研究してきた。物理的に離れた場所にいる人とリアルタイムでセッションできる新たなサービス「シンクルーム」を6月に無償提供した。結果として数十万人がダウンロードし、当初想定していたより大きな実績になった。

どこにいても音楽でつながることができる

――リモートでレッスンの質は担保できますか。

リモートツールソフトを使えば、教師と生徒が映像を通して互いの指使いをみたり、音を聴いてレッスンを行うことはできる。それだけでなく、さらに一段階上のレベルのレッスンも可能になりつつある。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

その点、ピアノでは技術がかなり先行している。「ディスクラビア」という自動演奏ピアノでは演奏時の鍵盤の動きだけでなく、弦を叩くハンマーの加速度、ペダルの踏みこみ具合を再現できる。遠隔地にあるピアノで奏者の演奏データを検知し、それを「ディスクラビア」に送信して演奏を再現できる。

再現された演奏とリモートツールソフトを組み合わせて、物理的に離れた場所にいる人にもレベルの高いレッスンを提供することができる。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では「リモートツールの技術開発に力を入れてきた理由」「今後の事業戦略」「音楽のあり方はどう変わるか」についても語っている。
劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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