――電子ピアノの売り上げが好調です。音楽の需要は根強いということですか。
改めて音楽の力を再認識した。楽器や音楽は生活必需品ではない。不要不急といえば不要不急だが、逆に家にずっといるのであれば音楽を聴いて、弾いて楽しみたいという人が多かった。
これまでも「大人の音楽教室」など楽器人口を広げるための施策をやってきた。ただ、時間がなかったり、きっかけがない人も多かった。それがコロナによってテレワークが普及し、通勤時間などを音楽に充てたいという人が増えた。
――しかし、演奏技術を学ぶ場である音楽教室は休講しました。
音楽教室は休講した一方、リモートレッスンなど新たな形態も加速させられた。ヤマハは音楽教室があったため、リモート(レッスンの推進)を躊躇していた。ただ、コロナが起きて、リモートのよさをもっと生かしたレッスンの形態があると発想を変えて取り組んでいる。
合奏の楽しみ方も違ってくる。1つが「ネットデュエット」という技術だ。20年以上前から時間や空間を超えて演奏を一緒に楽しめないか研究してきた。物理的に離れた場所にいる人とリアルタイムでセッションできる新たなサービス「シンクルーム」を6月に無償提供した。結果として数十万人がダウンロードし、当初想定していたより大きな実績になった。
どこにいても音楽でつながることができる
――リモートでレッスンの質は担保できますか。
リモートツールソフトを使えば、教師と生徒が映像を通して互いの指使いをみたり、音を聴いてレッスンを行うことはできる。それだけでなく、さらに一段階上のレベルのレッスンも可能になりつつある。
その点、ピアノでは技術がかなり先行している。「ディスクラビア」という自動演奏ピアノでは演奏時の鍵盤の動きだけでなく、弦を叩くハンマーの加速度、ペダルの踏みこみ具合を再現できる。遠隔地にあるピアノで奏者の演奏データを検知し、それを「ディスクラビア」に送信して演奏を再現できる。
再現された演奏とリモートツールソフトを組み合わせて、物理的に離れた場所にいる人にもレベルの高いレッスンを提供することができる。
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