外出自粛下で鉄道写真家は何を撮っていたのか スキルを増やせば自分の仕事の幅が広がる

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この写真を試しにSNSに挙げてみたら反応も上々。特に300㎜クラスの望遠レンズで撮影したような圧縮感が出ているので、普段から編成写真を嗜んでいる人にはより実物っぽく見えたに違いない。

キハ58+キハ28+キハ40の国鉄形気動車コンビ。(筆者撮影)

これに味を占めて次に撮影したのはキハ58+キハ28+キハ40の国鉄形気動車コンビ。これまた1990年初頭の秋田周辺の奥羽本線や男鹿線を走っていた気動車普通列車をイメージしたものだ。Nゲージ車両の撮影方法はED75形+50系客車とまったく変わらないが、さらによこしまな考えがわいてきて背景を合成することにした。背景を選ぶコツはNゲージの編成写真と同じ圧縮感で撮影した風景写真を選ぶこと。たまたま烏山線の小塙―滝間の森の風景がマッチしたので背景にしてみた。

ボケ具合やノイズ感を調整すると、自分でも「おお!」と思うくらいのリアルな情景になった。鉄道模型撮影は車両を好きな角度で撮れるので編成写真としても理想の一枚に仕上がった。

出来上がった写真を再びSNSで発表したが、これまた反応は上々で「烏山線の風景では?」と推察した方もいて私も楽しくなった。ますます調子に乗ってその後は秋田―青森間の特急「かもしか」冬臨で走行した583系をイメージして撮影し、背景も秋田内陸縦貫鉄道の秋田杉の林の雪景色をチョイス。これもSNSでいただいたコメントが嬉しくて仕方がなかった。

何事にも貪欲に挑戦

緊急事態宣言中にたまる一方だった「鉄道写真撮りたい発作」も一連のNゲージ撮影で少し落ち着いた。実車を撮影するときの緊張感はさすがにないが、撮影自由度が高いだけに「いかに格好よく撮るか」と試行錯誤する楽しさがあった。

また普段は色味のレタッチをするくらいで「鉄道写真に画像合成加工は邪道」となおざりにしていた。しかし、それは食わず嫌いにすぎなかった。写真家としては恥ずかしい限りだ。

今回の鉄道模型撮影は画像の合成加工技術のスキルアップにもつながり、結果としては緊急事態宣言下でも自分磨きができた。もちろん作品として鉄道写真を画像合成して作るということは今後もやらないかもしれない。それはプロ鉄道写真家としての矜持でもあるからだ。

だが、コロナ禍のニューノーマルが声高に叫ばれる時代、スキルが1つでも多ければクライアントの要望に応えらえることも多くなる。これからはさらに何事も貪欲にさまざまなことに鉄道愛・写真愛を持って挑みたい。みなさんもこんなご時世だからこそ、できる範囲での自分磨きと心の充実を図ってみてはいかがだろうか。

助川 康史 鉄道写真家

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すけがわ・やすふみ / Yasufumi Sukegawa

1975年東京生まれ。秋田経済法科大学法学部、東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。鉄道車両が持つ魅力だけでなく、鉄道を取りまく風土やそこに生きる人々の美しさを伝えることをモットーに日本各地の線路際をカメラ片手に奮闘中。鉄道ダイヤ情報や鉄道ジャーナルなどの鉄道趣味誌や旅行誌の取材、JTB時刻表(JTBパブリッシング)やJR時刻表(交通新聞社)などの表紙写真を手掛ける。またJR東日本などの鉄道会社のポスターやカレンダー撮影も精力的に行っている。日本鉄道写真作家協会(JRPS)理事。(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ勤務。

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