3つの実績を挙げた1年目のオバマ外交--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授

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 オバマ政権の三つ目の実績は核不拡散問題に取り組んだことだ。核のない世界の達成というビジョンを掲げ、核不拡散条約に書かれている核兵器削減というアメリカの長期的な目標を再確認した。さらに戦略兵器削減条約に続く新条約を今年末までに締結するためロシアとの交渉を開始し、核不拡散問題を国連やG20の最優先課題にしている。

批評家は、スーダンやミャンマーの人権問題と同様に、この成果は道徳的な立場を放棄する代償を払って達成したものだと批判している。また左派の批評家は、コペンハーゲンの気候変動会議の前にエネルギー法案を成立させることができなかったことに不満を述べている。

しかし、オバマ大統領は中国とインドに排ガス削減の努力をすると約束させ、会議の失敗を阻止するためにアメリカの削減目標も設定している。

もちろん、アフガン戦争の前途には大きな試練が横たわっている。アメリカ軍と同盟国の軍隊の増派と開発支援の増加によって、11年に予定される撤兵開始までに治安を回復できるのだろうか。アフガン政府は、タリバンに反対する市民を守る治安を提供できるのだろうか。

就任2年目を迎えるに当たり、大統領はアフガニスタン問題こそがオバマ外交の歴史的な評価を決める試金石となることを認識しなければならない。

Joseph S.Nye,Jr.
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。


(週刊東洋経済 10年1月23日号)

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