「飯田橋駅」ホーム移設、急カーブ消え危険解消 カーブだけでなく実は急勾配の緩和工事も
新ホームの工事は2016年12月にスタートした。ネックとなったのは、設置予定の位置が急勾配の区間だったことだ。飯田橋駅付近は新宿方面から千葉方面に向かって上り坂で、新ホームにあたる位置は最大で33.3‰(パーミル:1000m進むごとに33.3m上る)という、一般の鉄道としてはかなりの勾配区間だった。
そこで、ホームの設置にあたっては、旧ホームの中央付近から新ホームの位置にかけて軌道を約50cm下げ、勾配を緩やかにする工事を実施。1年以上を費やして、軌道を作業日1日あたり約8cmずつ低くする工事を繰り返した。ホームの急カーブを解消する移設工事のために、急勾配の緩和も必要だったのだ。
電車を運行しながらの難しい工事だったが、「リスク管理を徹底し無事故で終えることができた」(東京支社)。新ホーム部分の勾配は最大18.5‰に緩和された。
また、新ホームは一部が江戸城外堀跡の史跡区域に入っているため、埋蔵文化財の有無や正確な位置をボーリング調査などで把握したうえで、文化財を傷めないような構造を検討しながら施工したという。デザインについても落ち着いたダークグレーを基調とし、「ホーム上屋などが景観に与える影響を検討し、史跡区域の景観と調和するような意匠とした」(同社)と説明する。
「史跡」観光の駅にも?
新ホームの使用開始に合わせて、西口駅舎も新しく生まれ変わった。かつての駅舎と同様に線路をまたぐ牛込橋に面しているが、地元の千代田区と連携して駅前に約1000平方mの歩行者空間を整備。駅舎は史跡区域を意識した「日本建築の反りをモチーフとした佇まい」(同社)の鉄骨造り2階建てで、コンビニエンスストアなど5店が入居するほか、2階には「史跡眺望デッキ」も設けた。コンビニは駅舎使用開始と同時にオープンし、そのほかの店舗も順次開業予定だ。
今回のホーム移設や西口駅舎整備などの総事業費は約170億円。時期は未定だが、今後はホームドアも設置する予定だ。また、ホームの一部が史跡地区に入ることで「今まで一般の方が踏み入ることができなかった場所に新たな視点ができる」(同社)のも1つのポイントだ。駅舎の眺望デッキやホームなどには史跡の解説板なども展示する予定で、新たに観光の要素も生まれそうだ。
今年3月の「高輪ゲートウェイ」駅開業や6月の渋谷駅埼京線ホーム移設など大規模な改良が続く都心部の鉄道だが、その中でも飯田橋駅は安全性向上のためにホーム移設という大がかりな工事を行った珍しい例だ。バリアフリー化をはじめ、誰もが安心して使える駅施設が求められる中、今後の駅整備のあり方の1つの例になるかもしれない。
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