東芝の社外取、「モノ言う株主」提案への大反論 株主が提案する取締役選任案は「あり得ない」

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――エフィッシモは東芝の不正会計があった2015年から子会社で循環取引が続いていたことを問題視しています。

太田:2015年から循環取引があったのは確かだが、他社が主導的役割を担っており、東芝子会社は従属的な立場だった。

ふるた・ゆうき/1942年生まれ。1969年検事任官。1999年法務省刑事局長。2002年最高検察庁刑事部長。2003年最高検察庁次長検事。2005年最高裁判所判事。2012年弁護士登録。2015年9月から東芝社外取締役(撮影:尾形文繁)

一方、最初から不正案件に当事者が気づいていたのかも疑問だ。主導的役割をした他社との取引では正しい取引もあるし、秘匿案件もあり、どう峻別していたのか。少なくとも私どもの調査では、不正取引と分かりながらやったというエビデンスはまったく発見されなかった。

【2020年7月10日7時15分追記】初出時の記事における表記の一部を修正いたします。

古田:2015年からずっと東芝の社外取締役を務めているが、ガバナンスは強化されてきたし、意識改革や風土改革もかなり浸透したのは間違いない。ただ、何百もある子会社は残念ながら改善の余地が残っている。グループ全体のガバナンスをどう改善していくかは今まで以上に考えていきたい。

対話を終えた数日後に株主提案

――エフィッシモにはそうした経緯をきちんと説明したのでしょうか。

太田:説明したが理解されていないということだろう。循環取引案件について(2020年の)春先にエフィッシモから連絡があり、車谷暢昭社長CEOや綱川智会長らが説明や対話を随分やってきた。

エフィッシモの主張は、東芝ITサービス問題を東芝が矮小化しようとしており、2月に開示した報告書の要約版も正確性を欠いているのではないかという主張だ。

われわれは独立社外取締役なので、東芝執行側をどのように評価しているかも含めて繰り返し説明し、エフィッシモからは「これまでの説明は十分理解できた。それでいいんじゃないでしょうか」という趣旨の指摘をもらった。だが、振り返ると、対話を終えた数日後に株主提案をもらった。「あれは一体何だったのか」という印象が個人的に残った。

――エフィッシモはコンプライアンスを現場に徹底させるための仕組みができていないと訴えています。

太田:今の監査委員会の仕事はもっと(経営陣の)手足となり、現場に近いところでコンプライアンスを徹底すべきというのがエフィッシモ提案の趣旨だと思う。その観点からいうと、「コンプライアンス有識者会議」を7月8日に正式発足させた。

東芝は2015年以降、監査部機能を監査委員会に全部集約した。監査部は現在50人弱おり、日立製作所や三菱電機など同業他社と同等レベルだ。さらにこれを強化することにしており、2年以内には100人体制にしたい。

今回新たな会議に加わってもらう弁護士、公認会計士には、まったく別の観点でわれわれの足らざるところをぜひ指摘してもらいたい。

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